姉のような友のような、形容し難い強い絆 ページ9
鬼一side
太陽の光の下、俺は目の前で忙しなく動く部下達を見て回っている。丁度数日前に頼んだ物資が到着したのでな、その運搬作業の監視と指示をしているのでござる。
『火器類は武器庫に運ぶでござる。食料は倉庫に入れるでござるよ。機械の部品などは担当の者に任せるでござる』
嗚呼面倒臭い……大体俺は人に指示を出して使うのが苦手なのだ。
俺は何時も一人で仕事をこなす事が多いのもあり、単独で動く方が性に合っているのでござる。…今回は晋助の頼みだからやっているだけだ。
鬼兵隊の仕事の中でも一番労力を使うのがこの運搬作業だ。如何に腕の立つ武士が居ようとも、優れた戦艦があろうとも、物資が無ければ成り立たぬ。
重火器に刀、食料から船の修理に必要な部品、取引で手に入れた物資を運び入れるこの作業が一番重要で大変なのでござる。
それ故、この運搬中は何が起こるか分からぬ。おかしな動きをする輩が居ないかどうかを見るのも監視の役目だ。
「鬼一ー!」
『……!』
後ろから聞こえた快活な声の方に振り向けば、また子が手を振って此方に駆け寄って来ていた。
『お早うまた子。お主も監視役か?』
「そうッスよ!鬼一も同じッスか?」
『そうであったが…たった今解任でござる。後はお主に任せるでござるよ』
「あっ、何サボろうとしてるんスか!?」
『サボりではないでござる。適材適所、と言うヤツでござるよ』
俺は一人で動く方が気が楽なのでござる。それに今のところ不審な動きをする者も居ない。至極面倒、退屈なのでござる。
「こらー!」と喚くまた子をよそに、近くの木箱を足場にして屋根へと登る。眼前に広がる海を眺めながら腰を下ろし、背負った三味線を前へ持ってきて撥を取り出した。
さて、一曲弾いて時間でも潰そう。
「いい加減にしないと、晋助様に言いつけるッスよ!?」
『晋助はこの程度で怒る男ではござらんよ』
「いーや怒るもんね!絶対怒るもんね!」
『ほれまた子、しっかり見張らぬとそれこそ晋助に怒られるでござるよ?』
「あっ、確かに…って!私に丸投げするなーっ!」
相変わらず喧しいでござるな……。それがまた子の良い所でもあるのだが。
『(ほんと、からかい甲斐のある姉でござる)』
姉のような悪友のような……何とも言えぬ間柄ではあるが、側に居て楽しいリズムを生み出す。
くすりと漏れた笑みもそのままに、軽快な音を出す弦を爪弾いた。
言う事を聞かない弟のような、手間のかかる悪友のような→←気に入りの音楽ほど聴き入ってしまうものは無い
27人がお気に入り
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九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時