それは歩く道とは正反対の道 ページ50
鬼一side
『人助け…でござるか』
「そーそー、人助け」
白夜叉はそう言って気怠げな顔に笑みを浮かべた。確かに昨日、新八殿からも進言されていたな…。
『だが俺は人斬り以外本当に何も出来ぬぞ?』
「構わねーさ。ちょっとずつ慣れてきゃ良いんだよ。それにお前馬鹿力だし、ちったぁ力加減も覚えとけって」
白夜叉はそう言って懐から何かを取り出した。
それは包み紙に包まれた棒付きの飴で、苺の柄に包まれたそれを俺の方に出し、白夜叉はこう続けた。
「お前夜兎だろ?どんな経緯であの兄ちゃんの顔してんのかは知らねーけど、ウチに悩み相談なんてしたからにはとことん付き纏……協力させてもらうぜ」
『今付き纏うと言いかけたでござるな』
「う、うるせーよ!付き纏うじゃなくて、突き待とうだよ」
『どんな変換でござるか。そんなに溜まっているなら吉原にでも行け』
「ちっげーし!別に溜まってるわけでも変換ミスでも無ぇからぁ!」
『新八殿、すまぬがお茶をもう一杯下さらぬか。この茶葉美味しいでござる』
「あ、良いですよ!」
「俺の話を聞けえぇえぇっ!!」
全く喧しい男だな……。晋助から「コイツには気をつけなァ」などと言われたが……こんな死んだ魚の目を持つ男からは酔っ払いの鼻歌しか聞こえぬ。
淹れたての緑茶を飲みながら眼前でフーフーと息を切らす男を鼻で笑ってやると、「お前その顔ほんとに高杉に似てんなチクショー!馬鹿にしてんのか!?」と言われた。馬鹿にしてるのでござるよ。
『しかしお主の言い分は分かった。要は俺をカモにしたいと言う事でござろう』
「違ぇっての。たくっ、人の話は最後まで聞きやがれってんだ…」
ガシガシと銀髪を掻いてから、白夜叉は俺の事を真っ直ぐ見てきた。
その赤い目にほんの少しだけ光が灯る。聞こえる音色が少しだけ変わった気がした。
「お前、人斬り以外の事知らねぇだろ。世の中にはよぉ、人斬りより楽しい事が沢山あんだぜ?それを知らずにずっと人斬りとして人を斬りまくって死ぬなんざ、人生損してるもんだ。だから少しでもマシな人生送れるように、俺が教えてやんよ」
…生涯全てを鬼兵隊に費やそうとしている俺に、人生を損していると言うとは……奇妙な男だ。
『…晋助からは好きにしろと言われている。だから』
奴の持っている飴を奪う。包み紙を開いて、少しだけ微笑んだ。
『お主の演奏に、一曲付き合うのも良いだろう』
口に含んだ飴は、じわりと甘さを広げていった。
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九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時