甘い菓子と甘い褒美 ページ39
万斉said
ベッドの縁に腰掛けながら、鬼一は机の上に置いた血濡れの袋から箱を取り出した。
『お主が怪我をしたと聞いたから、見舞いの品にと思って買ったのでござる。…中身は無事、だと思うが……』
拙者の為に買ってきたのか…。食べ物を持って討ち入りに行くな、と怒るべきなのだろうが……先程晋助に怒られていたし、今回は不問にしてやろう。
申し訳無さそうに落ち込む鬼一から箱を取る。蓋を開けると、中には白い生地に包まれた美味しそうな饅頭が並んで顔を出した。幸いにも血は浸透していないようだ。
「ほれ、鬼一」
『んぐっ』
饅頭を一つ取り出し鬼一の口に押し付ける。箱からもう一つ饅頭を取り出して一口食べてみると、粒餡のしっとりした餡が口の中に広がった。
「ん、美味い」
甘味は日頃口にはしないが、たまに食べるからこそ美味いと思う。
一つ目を早々に平らげて二つ目を手にすると、拙者の肩にするりと白い指先が乗った。
『…傷は大丈夫でござるか』
不安げな真紅がじっと見つめてくる。肩を撫でる手に己の手を添えながら「大丈夫でござるよ」とだけ返し、その綺麗な呉須色の髪を撫でた。
「もう痛みも引いている。明日には動けるようになるでござる」
柔らかい髪を撫でると、鬼一は猫のように擦り寄ってくる。手に当たるサングラスを取ってやると、拙者とは色の違う赤い瞳が顕になった。
『治ってすぐ怪我を負ったら怒るからな』
「ん、分かった」
心配性でござるな。いや、それは拙者も同じか……。………そうだ。
昼に話した晋助とのやりとりを思い出す。鬼一も傷はほぼ塞がっているとは言え、血を大量に失っているだろう。此奴に飲ませた拙者の血が薄れるのも惜しい。
「鬼一」
『ん?』
もぐもぐと饅頭を食べる鬼一が此方を向く。拙者はコートの前を少し開け、首筋を晒すように襟元を緩めた。
「失血した分飲むと良い。お主の中から拙者の血が薄れると考えたら、寝るに寝られぬでござる」
『…病み上がりでござろ』
「構わぬ。それに増血剤も飲んできた」
そう言うと鬼一は少し考えた後、口元の餡を指先で拭い、舐め取ってから近づいて来た。
肩を掴み、晒された左の首筋を見てからチラリと拙者を見てくるので、拙者は迷わず頷いた。
『……んっ』
首筋に柔らかい唇が触れる。次の瞬間、鋭い牙が拙者の首筋に突き立てられた。
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九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時