お前の腕の中だから ページ38
鬼一said
……石鹸の香りがする。うっすらと瞼を開くと、薄暗い船内の通路が見えた。
定期的にリズム良く揺れる身体は誰かに抱き抱えられているらしく、通路の先から視線を己の頭上へと向けると、シャンシャンと音漏れのするヘッドホンを着けた万斉の顔が見えた。
『……万斉……?』
「ん?あぁ、起きたか鬼一」
何で万斉が……?…俺は確か、晋助の部屋に居た筈では……?
「全く…また無茶をしたようでござるな。それにコートも三味線もボロボロにして……」
『…相手が悪い……』
「晋助に怒られたのでござろう?次からは気をつけるでござる」
『……ん』
分かった。分かったから、お主まで怒らないでくれ……
抱き抱えられたまま、カツ、カツと鳴る足音に耳を澄ませる。微睡みながら万斉の胸元に擦り寄ると、温かい体温に眠気がまたゆっくりと戻ってきた。
『…』
…万斉の心臓の音がする……。トク…と動く心音を聞いていると、不思議と安心した。
『……万斉…』
「何でござるか?」
『お主がくれたヘッドホン、壊してしまったでござる……』
折角お揃いの物をくれたのに……流石に叱られるだろう……
怒るのを覚悟して少し緊張していると、万斉は「そうか」とだけ呟いた。
「心配するな。丁度新しいデザインの物を贈ろうと思っていたのでござる」
『……!』
新しいデザイン……?
「身構えずとも叱りはせぬよ」
そう言って万斉は優しく微笑んでくれた。…そうか……良かった……
『(もう着けられないかと思った……)』
万斉のくれたヘッドホンで、万斉の作った曲を聴くのが好きなのだ。次は壊さないようにせねば…
「さ、着いたでござるよ」
ガチャリとドアの開く音がする。そのままベッドに降ろされると、万斉は「そう言えば」と椅子を引っ張って持ってきながら俺を見た。
「晋助から血塗れのビニール袋を渡されたが、これは何でござるか?」
『………あ』
色々あってすっかり忘れていた……。中身は無事だろうか…
27人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時