この気持ちは果たして親心なのか ページ37
万斉side
「見てたなら出て来いよ」
部屋から聞こえた声に従い顔を出すと、晋助は呆れたように笑って鬼一の頭を撫でていた。
晋助の膝の上で眠る鬼一は何処か安堵したような表情を浮かべていて、その目尻は泣き腫らしたように赤かった。
「いつから居た」
「最初から」
「悪ィ男だな。…気づいてたか、コイツの本心」
「いいや、そのような素振りは一度も見せなかったからな」
あの自由奔放な鬼一から漏れた言葉……。まさかそこまで苦しんでいたとは……
「拙者も保護者失格でござるな」
「はっ、お前は前から保護者なんて面じゃねぇだろ」
くくっと笑いを零す晋助が拙者を見る。鋭い緑の瞳は、拙者の内を探るかのように怪しく弧を描いた。
「テメーは、鬼一を自分の物にしてぇんだろうが」
その一言に自然と笑みが溢れる。「だろ?」と首を傾げる晋助を前に、少しだけサングラスを押し上げた。
「はてさて、何の事やら……」
「しらばっくれやがって。こんなお前一色な姿見たらそう思うだろうが」
「そういうお主も随分と甘やかすではないか」
「くくっ、さてなぁ?俺とお前の気持ちは違うかもしれねぇぞ?」
そんな筈無かろう。第一、お主は子供の面倒を積極的に見る男ではないだろうに。
「……鬼一の音色は心地良い。荒々しく、何処か儚げで静かでござる。その不思議な音色に、魅了されぬ者など居ないでござろう?」
「音色、ねぇ。…なら俺も、とっくにその音色に毒されちまったって訳だな」
全くその通り。…あの月夜の中で見た虚ろな子供が、まさか此処まで面白き音を奏でるとは…誰が思っただろうか?
「(拙者は、鬼一の音色をずっと隣で聴きたいのでござる)」
苛烈で儚いその音色は拙者の心を掴んで離さない。自由に駆け回る姿が眩しく、そして心惹きつけるものなのだ。
…だからこそ思う。この手で縛り付けて、側に留め置きたいと。
「甘美な毒に侵されるのも、また良いものでござるよ」
「…違いねぇな」
晋助は笑って手招きをする。近づくと、晋助はすやすやと眠る鬼一を持ち上げて渡してきた。
「拾ったのはテメェだ。なら最後まで面倒見てやりな」
「…あぁ」
言われずとも、この命尽きるまでお主と…この愛しい子供を守り通そうではないか。
鬼一を姫抱きしたまま晋助の部屋を後にする。静かな寝息を立てるその額に、そっと口づけを落とした。
「…よく戻ったな」
血の付いた髪を撫で、そのまま鬼一の部屋へと向かった。
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九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時