検索窓
今日:3 hit、昨日:42 hit、合計:13,140 hit

何も憶えていないのに ページ35

鬼一side

「お前がどんな天人なのか、教えてやろうか」

顔を上げると、晋助は楽しげに笑っていた。頭を撫でる手もそのままにじっと見つめてくる緑色の瞳が、ただ静かに俺を捉えていた。

『…分かったのか?』
「ある程度はな。うちの参謀の腕は知ってるだろ」
『……はは、流石だな』

皆、俺の為に情報集めをしてくれていたのか……
手を離して座り直した晋助は「どうだ?」と俺に再度問いかけてくる。勿論、答えは一つだ。

『聞かせてくれ』

俺は自分の身体の事をよく知らない。だからこそ知りたかった。

「良いぜ、教えてやるよ」

晋助はそう言って、煙管で煙草を吸いながら話し始めた。


晋助達が集めた情報によると、俺は夜兎と影族と言う二つの天人のハーフらしい。
俺の身体は夜兎特有の肌の白さと怪力、影族特有の変身能力を引き継いでいるから、頑丈で変幻自在なのではないかとの事だ。

『なら、この再生力も遺伝だと?』
「あぁ、親譲りなんだろうよ。夜兎はンな化け物じみた回復力は持ち合わせてねぇから、もう片方の能力なんだろうなァ」
『…その影族という天人の事は分からぬのでござるか』
「まだよく分かってねェ。希少な天人なのか、資料が全く無ェんだと」

そうか……。…いや、血の出処が分かっただけでも上々だ。

「…鬼一?」
『……ぁ……』

気づけば自然と涙が溢れていた。サングラスを外して涙を拭っても、溢れ出ては頬を伝い落ちていく。
驚いた様子で俺を見る晋助の前で、俺は不覚にも涙を止める事が出来なかった。

『す、すまぬ…っ。すぐ止める、だから少し待って…』

煙草の香りが強くなる。視界いっぱいに広がる紫を帯びた黒髪と、黄色い蝶の飛ぶ着物。
まだ少し痛む熱を持った背中に優しく腕が回ると、そっと体を引き寄せられた。

「…良かったな」

一言。ただ静かに聞こえた晋助の言葉に、今まで我慢していたものが音を立てて壊れた気がした。込み上げる安心感に思わず晋助の背中に手を回し、声を上げて泣いてしまった。

良かった。俺は今までこの身体が怖かった。自分が異常なのだと思っていた。周りと同じ姿だと、人間の姿だとどうしてもそう思ってしまって……奇異の目で見られるのが酷く恐ろしかった。
だから、俺のこの力は普通なのだと、そういうものなのだと知った時、良かったと安心した。

良かった、嗚呼、本当に。俺は何も、何もおかしくなど無かったのでござるな……っ

たった一人の特別な存在→←誰のものか自覚しろ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (11 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
27人がお気に入り
設定タグ:銀魂 , 男主 , 河上万斉   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。