一陣の風のようなやつだった ページ29
銀時side
玄関前に立った時、中から聞こえてきた声を聞いてヒュッと喉が鳴った。
今日は何時もみてぇにパチ屋に寄って、珍しく大勝ちしたんだよ。もしかしたら、神様ってーのがこの為に勝たせてくれたのかもしれねぇ。
『世話になった。それと、驚かせてすまぬな』
その声は嫌でも誰の物だか分かってしまう。頭に浮かぶのは、あの青緑のロングコートだ。
「っ……!」
すぐさま玄関の戸を開ける。目の前に居るソイツに向かって、抜き放った木刀を迷わず振り下ろした。
『危ないでござろう』
ガンッと硬い物にぶつかる衝撃と音が俺に届く。痺れる腕の先には、木刀を受け止めた三味線の棹がギリギリと音を立てていた。
「(気配だけで防ぎやがった…っ!)」
しかもコイツ、ビクともしねぇ…っ!思いっきり打ち込んでやったってのに…っ!!
「てめぇ…っ!」
神楽と新八は無事か…!?コイツ…まさか俺の留守を狙って二人を始末しに来たとかじゃねぇだろうな!?
木刀と棹に挟まれた弦が削れて悲鳴をあげる。ソイツは涼しい顔で軽く首を傾げて、楽しげに口端を吊り上げた。
『お主が白夜叉か』
ソイツがサングラスを押し上げる。瞬間、ソイツは三味線を持った右腕を押し出すように突き飛ばしてきやがった。
「っ!?」
まるで車にでもぶつかったような馬鹿力で身体が吹っ飛ぶ。外の手摺に背中からぶつかると、走る痛みに思わず呻き声が漏れた。
「「銀ちゃんっ!/銀さんっ!」」
何だ、この馬鹿力…っ!人間の出せる力じゃねぇだろ……っ!!
幸い肉を打っただけの軽い痛みで済んだ。立ち上がって睨みつけてやると、ソイツは肩を竦めて持っていた三味線を背中に戻しやがった。
『心配せずとも、二人には一切手を出していないでござる』
「はっ…誰がンな事信じるかっての…っ!」
『そう睨むな白夜叉。次会う時は刃無しで語ろうではないか』
何が語ろうだ…っ!人の事散々吹っ飛ばしといて………ん?あれ?
サングラス越しに薄く見えた目の色に少しだけ体が固まった。アイツ…赤い目だったっけ?確か俺の記憶じゃ、黄色っぽい目の色だった気が……
『またな』
「あっ、おい!」
ソイツは手摺に手をかけると軽々と下に飛び降りた。下を見ると既にその真っ青なコート姿は消えていて、人がまばらに夕暮れの道を歩いているだけだった。
…何だアイツ…。嵐みてぇに去っていきやがった……
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九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時