万事屋という場所 ページ25
鬼一side
「ただいまヨ〜!誰も居ないアルか〜?」
ガラリと開けられた部屋の先からは誰の声も返って来なかった。どうやら誰も居ないらしいでござるな。
この少女、神楽殿と共に万事屋と言う場所まで来たは良いものの…滞在できるのは少しだけだろうと時計を見て思った。
まだ一つ仕事が残っているからな。遅れては少し困るものなのだ。
「そう言えば新八も銀ちゃんも居なかったアル。ごめんなカワカミ」
『謝る事は無いでござるよ。…奥の間に行けば良いでござるか?』
「うん!私お茶持ってくるネ!」
「ワン!」
靴を脱いで奥の間に来ると、後ろからついて来た定春と言う犬が尻尾を振って此方を見てくる。
動物は見た事はあるが、こうして触れるのは初めてだ。
『よしよし、いい子でござるな』
顎下を撫でてやると、定春は嬉しそうに尻尾を振って擦り寄ってきた。毛並みがとても……モフモフでござるな……
「定春がすぐ懐くのは珍しいネ!」
『そうなのでござるか?』
「そうヨ!銀ちゃんなんか頭からばっくりアル」
お茶の入った湯呑みを机に置きながら、神楽殿は向かい合うようにソファに座る。俺もソファに座ると、定春は神楽殿の隣にちょこんと座った。
「で、どんな悩みをお持ちですかお客さん〜」
目が…輝いている…。期待されているのだろう、かと言ってなぁ……そんな大きな悩みは……
『(……自分の事が知りたい)』
皆に捨てられない為にはどうすればいい。強くなるにはどうしたらいい。独りにならない為には、どうしたらいい。
『……自分のやりたい事が分からぬ』
渦巻いた願いは、そんな曖昧なものとして吐き出されてしまった。
「やりたい事が分からない?」
『まぁ…そうでござるな。やりたい事が分からないのでござる』
強くなりたい、の方がまだ良かったかもしれない。鬼兵隊での仕事は命のやり取りが多い。だから強くなる為にはどうしたらいいのかを聞けば良かったか。
……いや、その前に俺は子供に何を話しているのだろうか。少し冷静になった頭で小さく溜息をつくと、「分かったアル」と神楽殿が声を出した。
「要するに自分探しの旅がしたいって事アルな!」
『いや、合ってるようで合ってない気が、するのでござるが……』
やはり子供に相談するべきでは無かっただろうか……?
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九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時