何処か出会ったような、そんな音色だった ページ19
鬼一side
『キャッチですか?俺急いでるんですけど…』
「いやキャッチじゃないです!真選組!警察です!」
警察手帳を出す男は山崎退と言うらしい。手帳の写真でも地味な顔でござるな。だが……このじっくりと相手を観察するような目、これは普通の者には出来ない目でござる。
『(恐らく観察に向いた者なのでござろう…。少しでも不審な所を出せば此方が危ういか……)』
声を変えて良かった。擬態は全身だけでなく一部のみ変える事も出来る。今回は前の仕事で屠った男の声を急遽使ったが、万斉とは違う高めの声に目の前の男は困惑しているようだ。
幕府に飼われる狗ならば鬼兵隊の面々も知っている筈だ。俺も万斉に似ているから、別組織の攘夷浪士に何度も間違えられて斬りかかられている。今回も万斉だと思って声をかけたのだろうが……生憎俺は本人ではない。
『警察の人ですよね?あの、俺なんかしましたか…?』
なるべく普通の話し方で。大人しそうな青年を演じる。
目の前の真選組の男は「う〜ん…」と唸りながら、まじまじと俺を見ていた。
「失礼ですがお名前は…」
『河下です。河下鬼一』
「そのサングラスとヘッドホンは…」
『趣味で着けてるものですけど』
「あ、ご趣味ですか。成程〜……えっと、その三味線は……」
『今から和楽会の集まりに参加する所なんです。あの、もう良いですか?遅れると怒られるんですけど…』
「ちょ、ちょっとだけ!もうちょっとだけ待って下さい!」
…粘るな。既に時刻は昼を過ぎて3時になろうとしている。流石に遅くなると次の仕事に影響が出るのだが……
「すいやせんねお兄さん。コイツちょっと鈍臭くてねェ」
その声を聞いた瞬間、心音が大きく高鳴った気がした。
赤い瞳がサングラス越しに交差する。男の隣に立った青年は一歩前に出ると、俺の腕を力強く掴んできた。
「……何でそっちに居るんだ」
…懐かしい。その姿も、声も、何故か不思議と懐かしさがある。
高鳴った胸が酷く痛む。まるで何処かで会ったかのようなそんな音色に、思わず聴き入ってしまった。
ソイツァきっと、運命ってヤツなんだ→←どう見てもその人にしか見えないんだって!
27人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
九龍(プロフ) - 連夜さん» コメントありがとうございます!こちらはこちらでまた色々と違った道を辿ると思いますので、楽しみにしてて下さい!無理せずに更新頑張ります!! (6月3日 1時) (レス) @page29 id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
連夜 - 真選組の方も見ました!!高杉晋助カッコイイっス。鬼兵隊は家族って感じがなんかします。真選組は同志とか兄弟みたいな。主人公も少し設定が変わってて、真選組との絡みも前世?の記憶みたいで面白いです。応援しています。無理せずに。 (6月3日 1時) (レス) @page29 id: 433cf63c41 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月29日 1時