ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ27)

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😈彼の魔法ページ27

マルフィside

「ほんと、どうやって出してるんだろうね、あの斧」

彼の手にする金色の斧を見て、私はポツリと呟く。ここから見ても彼の持つ斧は彼の身長を軽く超えており、質量も見た目通りあるはずだ。それをあのように平然と持ち、なおかつ即座に出現させるなんて早々出来やしない。

「あー、あれ？あれは僕たち共通で出来る魔法のおかげさ」

ジャックの返答を聞きながら、私はエースを見る。ポライトが彼から斧を受け取った瞬間、

「ぅわっ！？」

ズシンッとポライトの体が下へと引っ張られ、斧がガチッと床にぶつかった。

『持てないだろ？それもそうさ、それは僕が陛下から賜った僕の斧だからね！ほら、さっさと診なよ』
「み、診る以前に…………も、持ち上がらない………っ」

意地悪してるなぁ〜………んん〜、流石ヴィランズ〜。
斧を持ち上げて診ようとするポライトを、彼はケラケラ笑いながら眺めている。彼なりのちょっとした反抗心だろう。

「エース、意地悪はダメだよ？」

後ろから声をかけてやると、彼は『ちぇ〜』と口を尖らせて斧に触れた。途端に斧が持ち上がり、ポライトが「わっ！」と声をあげる。

「か、軽い…！」
『当然だろ、僕が触ったんだから』

…不思議な斧だ。持ち主が触れると重さが消えるのか？それに魂のみを切り落とす魔法も中々に興味深い………

「興味津々だね、マルフィ」

立ったままエースを眺めるジャックに言われて、私は「まぁね」と返した。
実際彼の魔法をしっかりと見るのは初めてだ。知る限り、空間からものを取り出す魔法と空間を繋ぐ魔法を操るのは分かっているが……それらはジャックも出来る。もしかしたら彼ら二人は同じ魔法を操るのかもしれないな。

「彼の魔法をこうしてみるのは初めてだからね」
「あー、それもそっか。エースはね、凄いよ」

ジャックは笑って彼を見る。他のメンバーが帰り私とジャックしか居ない控え場所から、彼の点検風景をぼんやりと眺めた。

「斧は問題ありませんね……。ではこれで」
『え？まだ魔法出してないけど』

ふと聞こえた彼の言葉に「ん？」と声を漏らす。ポカンとするポライトと私を置いて、エースは微笑んだ。

『僕の魔法、まだ出してないよ』

その言葉が聞こえた途端、部屋全体の空間が歪んだ。

「っ！？」

驚いて思わず席を立つと、エースが『動かない方がいいよマルフィ〜』なんて呑気に声を出す。歪んだ空間の中、彼は馬鹿にするように笑っていた。

『僕の魔法は、これだよ』