ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ19)

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❤真っ黒な薔薇ページ19

ジャックside

それにしても面倒なことになっちゃったなぁ。折角エースが起きて復帰したってのに、その薔薇のせいで何か素直に喜べなくなっちゃったよ。ソファに座って溜息をつくと、マルフィを肩に乗せたエースが『どうした？』って声をかけてきた。

「いや、エースが戻ってきたのに喜べないなーってね」
『…まぁ仕方ないだろ。とにかく僕達は、二人が戻るのを待つしかないさ』
「鼻の効く犬っころと優等生の林檎がついてんだ、普通に戻ってくるだろ」

ぶっきらぼうにそう言って書類を書き進めるエイトフットを見て、僕はエースに視線を移しながら「退屈だ～」なんて伸びをした。

『そう言えば、ナイトメアローズってどんな見た目をしてるんだ？香りが良くて怖い魔法持ちなのは分かったけど』

ん？あー、ちゃんと話してなかったっけ。

「ナイトメアローズはね、真っ黒な薔薇なんだよ。根も茎もその花すらも真っ黒な薔薇だ」
『真っ黒…。…あの薔薇ぐらい？』
「そうそう、あの薔薇ぐらい……え？」
「は？」
「ん？」

エースの指さした方向には、花瓶に入った黒い薔薇がある。葉も、茎も、花も真っ黒で、棘の先が紫色の薔薇……

「「「あれだーっ！！！」」」

僕達が声をあげた瞬間、薔薇から無数の棘が飛んできた。弾丸のように射出される棘を各々が魔法で防ぐ中、僕は右足に鋭い痛みが走るのを感じた。

「っ…！」
『ジャック！』

やば…足に棘刺さった…っ
赤いインクが滲む足から棘を引き抜こうとした時、突然気持ちが沈んで手が震え始める。あ…まずい、まずいの分かってるけど、もう、こうなったら取り返しつかないよね…？

『ジャック！しっかりして！』

肩を揺すってくるエースの背後からまた棘が迫ってくる。肩に乗ったマルフィが火を吐いて棘を焼き尽くす中で、エイトフットが水の玉の中に薔薇を閉じ込めるのが見えた。

「エース！ジャックの棘何とかしろ！！」
『分かってる！』

震える手が紙に変わっていく。体の内から魔力が溢れ出して、洪水のように込み上げてくる魔力がインクになって体から漏れ出していく。溶ける、人の形が、保てなくなって…っ

『っ、この…っ！』

ズキっと足が痛む。エースの手によって棘が一本抜けるとインクが吹き出して、その場にインク溜まりを作っていく。
くそ…ネガティブな思考が止まらない…っ、意識が朦朧としてきた時、エースが僕を抱き締めてきた。

『すぐ抜くから我慢してくれ…っ』

こういう時、エースって頼もしいんだよね。