ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ18)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:7,820 hit

🍎持ち込んだのは誰かページ18

アップルside

「で、ナイトメアローズは今何処にあるんだ」

私の一言に、エイトフットは小瓶を懐にしまって肩を竦めた。

「さぁな。ハイタワーの何処かにはあると思うが、持ち込んだやつも場所も分からずじまいだ。薔薇ならトランプ組が詳しいんじゃねぇのか？」
「まさか！僕達の世界にそんな物騒な薔薇なんて持ち込んだら、それこそ首を刎ねられちゃうよ！」
『僕も聞いたことが無いな。前の僕もその薔薇のことは知らないみたいだし』

…そうか。だが、ナイトメアローズなら…持ち込みそうな人物には心当たりがある。

「…二人が知らないとなると、ヴィーラにでも聞いてみるのはどうだろうか？」
『ヴィーラ？』
「嗚呼、エースはまだ会ってなかったか。Vと同じく謎の多い女性だが、私達同様人間を此方へと誘うリクルーターの一人だ」
「リクルーターというか、司会役のような立場ではあるけどね。君もいつか会うはずさ～」
『ふぅん…？』

ヴィーラはファッション関連の情報には詳しい。ナイトメアローズのことも何か知っているだろう。

「ナイトメアローズはその希少性と香りから香水の材料として使われることがある。彼女ほどのデザイナーなら耳にしたことはあるはずだ」
「じゃあ僕がポライトに話つけてくる！アイツしかヴィーラの部屋の鍵開けられないからな！」

「薔薇の匂いがしたら気づくし任せろ！」と意気込むダルメシアに、「私も着いていこう」と同行することにした。私なら毒で大抵の植物を枯らすことが出来る。もし襲われでもしたら大変だから一応な。

「エース、お前は談話室に居るといい。まだ本調子じゃないだろう」
『そうするよ。此処なら皆も居るし安全そうだ』

マルフィの喉元を撫でながらそう笑うエースの頭を撫でて、私はダルメシアと共に部屋を後にする。廊下に出ると、むっとする薔薇の香りが廊下に満ちていて思わず鼻を覆った。

「うわっ！？何だこの匂い！？」
「っ…まさか、ダルメシア避けか…っ？」

あの薔薇は意思を持つ魔法植物。匂いに敏感なダルメシアに気づいて逆に香りを充満させたか…っ

「急ぐぞ。知恵をつけてきたら手に負えなくなる」
「う、うん！」

ダルメシアと共に廊下を走ってポライトの部屋を目指す。強い薔薇の香りの中、黒い薔薇を見ないことを祈りながら足を進めた。