👿親友として ページ43
マルフィside
「体の具合はもう良いのかい?」
『うん、もう大丈夫』
彼の部屋のソファに座って、椅子に座って書類の片付けをする彼の背中を眺める。今彼は昨日まで散々書いた書類を整理しているらしい。机の上に乗せられたお菓子の盛り合わせからチョコを一つ摘んで食べながら、トントンと紙を叩く軽快な音に耳を澄ませて鏡を眺める。何も話さずとも、こうして居るだけで存外居心地が良かったりするものさ。
「一時はどうなるかと思ったよ」
『あはは、ごめんって。僕もまさかそんな事になるとは思わなかったんだ』
少し前まで彼からアップルとジャックの魔力の色が見えたのが原因だろうなぁ…。あの珍しい遅刻の日の変化に、恐らく彼の体がついていけなかったのだろう。アップルもジャックも意外と強い魔力の持ち主だからね。
「質の良い魔力を摂取する時はゆっくり摂るといい。一度に摂取したら魔力酔いしてしまうよ」
『え、そんなのあるの?』
「おや、知らないのかい?」
振り返って私を見る彼に、私は魔力酔いの説明をした。魔力酔いは酒で酔っ払った時に近いもので、魔力の保有量が少ないものや魔力耐性が弱いものが一度に多くの強い魔力を浴びることで起こる。軽い症状ならば目眩や気持ち悪さで済むが、重度であれば強い魔力に影響されて精神に異常をきたしてしまう。対策としては、強ければ強いほど間を置きながらゆっくりと摂取することだ。
「身体に馴染んでしまえば魔力がいくら強くとも耐性がついてくれるからね。次から参考にしてみてくれ」
『成程……。流石マルフィ、頼りになるよ』
「ふふ、私は君の親友だからね、当然のことさ」
もう一つチョコを頬張れば、エースがいつもの注ぎ口が3つあるポットで私の好きなアールグレイの紅茶を淹れてくれる。温かな紅茶に角砂糖を一つとミルクを少し入れて飲めば、エースが隣に座ってうんと伸びをした。
『休みの日って良いね。のんびり出来る』
「ジョーは逆に何をしていいか分からないらしいぞ?」
『そうなの?ん〜…僕はそんなことないからなぁ。本も読みたいし皆とお喋りしたいし…』
「やることが沢山だね」
『僕は皆が好きだから、きっとたくさんお話したいんだろうね』
そう笑う彼の顔は昔と変わらない。一枚目の君も、今の君も、浮かべる笑顔はいつも一緒だ。そんな君の姿に、私は少し安堵する。
「(この先彼は、また首を刎ねられる時が来るかもしれない)」
それでもその笑顔だけは、変わらず浮かべて欲しいものだ。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月31日 1時