ハートのトランプは幸せな夢を見る (ページ3)

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❤酷いじゃないか！ページ3

ジャックside

「起こしてくれても良かったじゃないか…」

べチャリと白い薔薇にペンキを塗れば、エースが『ごめんって』って僕に謝ってきた。
エースの仕事中に運悪く起きてしまった僕は、赤と黒のインク塗れのエースと一緒に今薔薇を塗ってる途中だ。まさか僕をおんぶしたまま仕事するなんて誰も思わないじゃないか。しかも返り血…じゃなくて返りインク塗れだし！

「これ、ハイタワーに行ったらお風呂直行だよ…」
『嫌だなぁ…お風呂まだ慣れないんだよね』
「僕も一緒だよ…お風呂ってほんと嫌い」

紙を水に浸けにるなんてどうかしてるよね！僕達はトランプなのに皆お風呂に入れって煩いし！
ペタペタとペンキを塗っていきながら、髪から溢れる黒いインクを袖で拭う。エースの処刑は勢いよく首を斬るから、ぶしゃってインクが飛び散って凄いことになるんだ。真っ赤なインクならエースも機嫌が良いんだけど、今日はクラブとスペードが多くて真っ黒だ。おかげでエースもちょっと不機嫌そうに薔薇を塗ってる。あぁ、眉間に皺寄ってるよ…！

「エース、エース」
『ん？』
「お顔が険しいことになってるよ。まるで怒った時の女王様みたいだ！」

むっと真似すれば、エースは『あ～…ごめん』って眉間に指を当てて溜息をつく。機嫌悪いなぁ…、そうだ！

「エース、こっち来て？」
『？何で』
「いいからいいから！」

物凄い顰め面の彼に手招きをすると、彼はバケツとヘラを一旦置いて僕の方に歩いてくる。目の前まで来ると、僕はエースをギュッて抱き締めた。

「人間って、ハグをすると幸せな気分になって癒やされるんだって！だからエースもちょっと休憩！」

ぎゅーって抱きしめると、エースが僕の背中に手を回してきて抱き締められた。インクの臭いが凄いや！でもそれ以上に温かくて、人間になってから体の中に収まったハートがトクトク動いてるのが分かって、僕は頭を彼の頬に擦り寄せて「どう？」って尋ねた。

『……足りない』
「わ！？」

び、びっくりした…突然倒さないでよ～！
押し倒されて驚く僕を、エースはしっかり抱きしめる。よく見れば伏せられた目はじっと僕の赤いハートのボタンを見ていて、目が合わないことに僕はちょっとだけムッとした。

「君のハートはこっち」

ぐいって顔を上げさせると目と目が合う。そのままじっと見ていたら、顔が近づいて…

「ん…っ」

熱いキスをされた。もう、甘えん坊になったなぁ。深く口付けながら、僕達は寝転がって何度もキスをした。