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幼馴染を女性として意識するようになってから、無防備にこちらのテリトリーへ入り込んでくる彼女に対して苦虫を噛み潰したこと数知れず。
妹みたい、と思うことで何度もそれっぽい雰囲気を回避してきたが、自分の気持ちを認識してからは彼女の一挙手一投足に翻弄され、一時は疲れ果てて顔を合わせないようにした程だった。
最近は自分の仕事が忙しく会う暇さえ無かったけれど、久しぶりに顔を合せた彼女は相変わらずだった。
「俺んちに入り浸ってたらいつまでも彼氏出来ねぇぞ」
「そんなことないよ」
「紹介しようか?」
「結構です」
そんなこと言いつつ紹介する気はこれっぽっちも無い。
まぁ、自分を売り込むことにも二の足を踏んでいる訳だけど。
「拓司くんだっていつ彼女出来るの」
「そんな簡単に出来たら苦労しねぇよ」
「頭良くて運動も出来て、モテモテでしょ」
「馬鹿にしてんの?」
「本当のこと言っただけだよ」
彼女がにやりと笑う。
何も知らない、というのは罪なことだ。
「でもテレビに出てるし社長もやってるし、拓司くんなら選び放題じゃないの?」
「なんで?」
「私の有名人のイメージはそんな感じ」
「毒されすぎだろ」
「遊びの女がたくさん!とか、」
「変なもん読んだ?」
「ネットでよく見る」
彼女は極端なゴシップばかり目にしているようで、酷く凝り固まったイメージをスラスラ述べていく。
まるで、目の前にいる男ですらそうであるかのように。
「だから拓司くんも、そういうことしてたりするのかなって、」
「そういうことって、こういうこと?」
こちらの気も知らないで、と何だか無性に苛ついて、手を掴むと同時に二人でベッドへ雪崩れ込む。
「俺が不特定多数とこういうことしてるって、本気で思ってる?」
「そ、んなことない、…」
「遊びたいから彼女作らないって、」
「そこまで言ってないけど、」
「何で俺に彼女がいないか考えたことあんの?」
「それは、いい相手がいない、とか…」
「全然解ってねぇな、」
髪の隙間から覗く白い首筋にふ、と息を吐くと、大袈裟な程身体が跳ねる。
「彼女がいない理由なんて、Aしか見てないから、ただそれだけだよ」
「や、えっ」
「まだ解んない?」
「いや、違う、待って、」
真実を伝えた途端、彼女の目が泳ぎ、それ以外の動きがピタリと止まる。
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キタ(プロフ) - さちさん» コメントありがとうございます。まさしくミッシェルの「世界の終わり」を意識していましたので、分かっていただけて嬉しいです。拙い文ばかりですが、また更新していきたいと思いますのでよろしくお願いします。 (2019年10月29日 0時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
さち - はじめまして。「終焉のエピローグ」を読んで、初めてコメント致しましたm(_ _)m。ミェルガンエレファントの「世界の終わり」のような世界でquizknockとミッシェルが好きな私にはたまりません(*^-^*)。これからも楽しみにしています(^-^) (2019年10月28日 22時) (レス) id: 4daa7caae5 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - やまうみ。さん» コメントありがとうございます。前作からということで長い間ご贔屓にしていただけて有難い限りです。例の件はこういうジャンルではままあることですので、仕方ないですね。なるべく更新し続けていけたらと思いますので、今後もよろしくお願いします。 (2019年10月14日 2時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
やまうみ。 - 初めまして、コメント失礼いたします。前作からずっと読ませていただいておりまして、どのお話も読みごたえがあり美しい文章にやられております。騒動があったなかで続けてくださる数少ない作者様の一人でいらっしゃるキタ様が憧れです、これからも応援してます! (2019年10月13日 19時) (レス) id: e8e6962fde (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - 佐野様>>コメントありがとうございます。良く見るお名前にびっくりしていますが、前作からお読み頂けていたなんて光栄です…!纏まりのない話ばかりですが、色々捻り出して更新してみたいと思います。佐野様の作品も楽しみにしています。 (2019年10月6日 22時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キタ | 作成日時:2019年9月26日 19時