・ ページ4
*
《あのヒト達、ムウマ達を捕まえる気なの……？》
キルリアが身震いしたのを見て、小さな背を摩ってやる。そんな事はさせない。その為にヒルフェが出てきたのだから。
男らがヒルフェの近くまでやって来たのを眼下に見て、ヒルフェは細く息を吐き出した。
「止まって、其処のヒト」
木の上から声を掛ければ、彼らは困惑した様子で周囲を見回すが、気の所為だと思ったのか尚も進もうとする。もう一度繰り返すと、流石に気の所為だとは思えなかったのか、立ち止まって周りを警戒し始めた。
やがて、女の1人が木の上にいるヒルフェを見つけ、他の者達もヒルフェに視線を向ける。ヒトの視線が向く事に慣れないヒルフェは、直ぐ様帰りたい気持ちをぐっと抑える。全てはムウマージ達の為だ。
「この島は何人たりとも立ち入ってはいけない場所だよ……肝試しだか何だか知らないけれど、手遅れになる前に帰った方が良い」
「はあ？ でも、立入禁止とか書いてなかったぜ？ 街でもそんな話は聞かなかったしよ」
「そうよそうよ。それに、『フルーフ諸島の呪い』だとか何とか言ってたけど、結局そんなのも無いじゃない」
街で聞かなければ事実は無い事になるらしい。今になっても呪いが無ければ今後も無いらしい。全く、酷く愚かというか、単純に馬鹿だ。
「……君らは、何をしに来たの。肝試しなら、充分済んだでしょ」
「いやぁ、最初はそうだったんだけどさ、ブレッドが向こうに行くムウマを見たって言うから、どうせならポケモンの1匹でも捕まえて帰ろうかなぁって話になったのさ」
「野生ポケモンが強いって掲示板にも書かれてたし、捕まえたら即戦力だろうなあ」
そう言ってけらけらと笑う男女に、ヒルフェは氷点下の視線を投げる。ポケモンにだけ聞こえる周波数の声をか細く発すれば、聴き届けた幾体かのポケモン達が声を返した。
男女はそれに気付かず、尚も悪びれもせずにはしゃいでいる。
「そういう事だから、俺らもう行って良いか？」
「ていうか、君は何でこの島にいるのさ。管理人？」
「……違うよ。僕はこの島に住んでるから」
「は？ 無い無い。この島は無人島だって街で聞いたぜ」
「街で聞くものが全てだと思ってる時点で、馬鹿さ加減が知れるよね」
「ああ？」
ジャブ程度に煽ってやれば、体格の良い男が簡単に乗ってくる。どうにか止めようとしている者もいる様だが、意味は無さそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
