粛清は安寧の為に ページ3
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往々にして、ヒトは不思議な噂話を聞くと、真相を明かしてみたいと思うものだ。特に若者に多いこの習性は、即ち危険に足を突っ込む可能性を高める事を表す。
飛んで火に入る夏の虫、という諺が作られているが、ヒトも大概であると思う。言わば、勇んで危険に入る愚かなヒト、と言ったところか。
何故そんな事を考えているのか、と問われれば、実際目の前にその愚かなヒトがいるからなのだが。
「ヒルフェ、どうする？ 今の所は害は無さそうだけど」
ヒルフェお手製のタブレット端末に入っているロトムが、ふよふよと周辺を漂いながら訊ねてくる。彼の画面には薄暗い森が映っており、その中で5人の若い男女がきゃらきゃらと笑いながら歩いている。
『フルーフ諸島の呪い』とやらが最寄りの街で語られているのは、ヒルフェも耳にしている。その噂に釣られてやって来る阿呆が月に1度は必ずいるのだ。
現在ガイスト島の森を歩く彼らは、どうやら肝試しに来ているらしい。年中薄暗い上に悍ましい噂が広がるこの島は、確かに肝試しには丁度良いだろう。街のヒトには無人島だと伝わっているらしいから、余計に不法侵入が絶えない。
しかし、肝試しから帰った者が「野生のポケモンが強そうだった」「色違いがいた」等と騒ぎ立てる為、密猟者も引き連れてくる事になるのだ。それが一番腹立たしい。
「あっ、ちょっとヤバそうかも」
不意にロトムが上げた声に、視線を画面に戻す。1人の男が、ムウマとムウマージが棲家としている一帯に近付いていっている。明らかに意識的だ。共に来ていたヒトらも男についていく。
荒らされると拙い。彼処には最近子供が生まれたから、幼いムウマを抱えて対応するのはムウマージに負担が大きい。
「僕が行ってくるよ。キルリア、［テレポート］をしてくれる？」
《任せて。ヒトに近付くのは、ちょっと怖いけどね》
ふわりと現れたキルリアがヒルフェの腕に触れた、その瞬間に［テレポート］した。場所はムウマージ達の棲家と肝試し集団の間。木の上に登って、安定した太さの枝に腰掛ける。キルリアはその隣に淑やかに座った。
やがて、男の姿が先に見えて、その少し奥に他の男女の姿も見えた。相も変わらず騒々しい笑い声だ。
本当にこっちにポケモンの巣があるの？ ああ、絶対にあるね。さっきムウマが向こうに飛んでいったからな。 偶然かもしれないでしょ？ でも、確実にムウマ1匹はいるだろ。
そんな事を話しながら、彼らは歩いていた。
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