唇に、さよなら。 (ページ25)

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２５：理性。ページ25

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｢明日は、美味しいものいっぱい食べよう。｣
｢うん！紫耀くんは何が好きなの？｣
｢俺？･･･んー、なんか今、Aちゃんの手料理しか思い浮かばない。｣

へへって、罪深い笑顔に
私はどれだけ翻弄されたらいいんだろう。

｢紫耀くんの為なら、いくらでも作るよ。｣
｢ほんと？マジですげー嬉しい。｣
｢リクエストとかあったら、全然言ってね。｣
｢オムライス！｣
｢オムライス？分かった、今度また作ったら持っていくね。｣

特大オムライスを作ってあげようと企んでいると
私の顔をジーッと見つめたままの視線に気づく。

｢･･･なに？なんかついてる？｣

もしかして、顔に生クリームとかつけちゃってる？
慌てて口元をティッシュで拭くけど、
何にもついてないよ、ってちょっと不満げな顔。

｢ワガママ言ってもいい？｣
｢え？なに？｣
｢持ってきてもらえるのも嬉しいんだけど
俺、Aちゃんと一緒に食べたいな。｣
｢えっ、｣

それで、そんな不満げな顔したの？
可愛いって感情と、シンプルな戸惑いでどんな顔をすればいいのか分からない。

｢こんなこと言って、困らせるのは分かってるんだけど
俺、正直今、Aちゃんにすげー惹かれてる。｣

決して冷やかしではない、真っ直ぐで真剣な瞳。
私を捉えて離さないその瞳に、ごくりと息を飲む。

｢俺が知ってるAちゃんは、まだごく一部だとしても
こんなに人の事をもっと知りたいって思ったのは
Aちゃんだけなんだよ。｣

紫耀くんの温かくて硬い手のひらが
私の髪をそっとなぞっていく。

髪に触れる手を、追いかけるように動くゆっくりとした視線は

ドキドキと、心臓が破裂しそうなほどの色気を纏い、
今にも理性を吹っ飛ばしそうな程だった。