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あの後はAは任務に、私たちは学校へ戻り悟から貰ったお土産の喜久福を食べている。
「先生って金持ちで仕事できるし、アイツみたいに変じゃなくて頼りになって、その上美人の奥さんがいるとか聞いてないんですけど」
「はは。そうだね、幸せ者だよ私は」
野薔薇ちゃんは褒めてくれてはいるんだけど、ムカつくと言いたげな表情で、スイーツを頬張っている。
「いつから付き合ってるの?」
「そうだな……。確か、高校2年生のときだったよ」
「っていうことは……10年くらいってこと?!仲良いな…ほんと…」
虎杖くんにいつと聞かれれば、思い出す。高専時代は色々あった。Aと喧嘩してしまうこともあったし、というか私が一方的に怒ってしまったんだけれど。10年という言葉にそれだけ一緒にいるのか、感慨深い。
「はい、じゃあこれ食べたら授業戻るよ」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「A、ただいま」
『おかえり、傑』
今日も仕事を終えて家に着き、扉を開けるとリビングから小走りでパタパタとスリッパの音を鳴らしてAが笑顔で出迎えてくれる。その姿が可愛らしくて、思わず抱き締めてしまう。家なんだから、これくらいはいいだろう。
『!…連日お疲れ様。ご飯できてるから着替えて一緒に食べよう』
「そうだね。Aが作ってくれたご飯が冷めてしまうしね。……あ、これ、お弁当ありがとう」
『どういたしまして』
抱き締めるのをやめて、鞄からお弁当箱を取り出して彼女に渡した。彼女は満足気に笑って、お弁当箱を受け取り、一足先にリビングへ戻って行った。私は手を洗い、部屋着に着替えて、リビングへ向かう。
食卓には美味しそうな、料理が並んでいる。私が席に座ると、二人で手を合わせて雑談をしながら食事を楽しんだ。
食事が終わり、二人で洗い物を終えてからソファに座りのんびりとテレビを見て寛いでいる。
『今日は何も言わず、傑の任務引き受けてごめんね』
「……本当に心配したよ。ちょっと怒ってる」
隣に座る私の手を優しく握ると反省したような小さな声で私にそう言ってくるので、意地悪がしたくなり少し怒った振りをしてみる。ちらりとAの顔を盗み見ると、少し落ち込んでいてそれが可愛らしいがぐっと堪える。
すると、私の膝の上に無理矢理向き合うように座ってきた。
『傑、ごめんなさい。助けに来てくれてありがとう』
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作者名:蓮実 | 作成日時:2023年10月16日 0時