思い出話 ページ11
「そうだなぁ、私は…バスケ部の主将をさせてもらってたかなぁ。ごめん、なんか自慢みたい。」
四井さんは、珍しく無邪気に笑ってそう言った。改めて考えると、四井さんは誰かを安心させるような笑顔を見せることが多い。
中学時代の話をして無邪気な表情を見せるということは、四井さんにも今より幼けな時期があった証みたいで新鮮だ。
「私は…中二病だとか言われていたな。よくわからないが、左腕に巻いていた包帯がその名の理由らしい。」
…真面目に言っているのか、ウケを狙っているのか。
まぁ、皆が皆「中二病」の意味を知っているとは限らない。それに、九子さんを見ていると伊達に今の性格でいるとは思い難い。
彼女は、誰より自然体な正義の味方なのかも知れない。
「俺は、今より地味だったよ。まぁ、高校の入学式写真も地味に写ってるけど…
学級委員決めの前だったし、同じ中学出身もいないし、俺は最初からこの見た目だったって思われてそう。」
弐筱君は、なんでも無いようにさらっとそう言った。皆は口々に驚きや疑いの声を漏らした。私だけは落ち着いて聴いていられることがなんだか嬉しい。
そして、弐筱君が今こんなにも格好いい理由が私ということも嬉しい。何故だろう、気分が上がるな。
「僕は、そうだな…科学の成績だけはずっと良かったことを覚えているよ。それ以外は3やら、まぁそこそこという感じだったかな。」
「故に自慢には出来ないね」、と付け足して千山君は苦笑った。現在も科学部だし、余程科学が好きなんだろう。
それに、そうは言っても千山君は科学以外の成績もそれなりに良い。だからいつも余裕があるし、臆病な億田君とも付き合いが続いているんだろうな。
「ええと…うん、まぁ普通…いや、普通以下かなぁ…中学校演劇部無かったから、単なる出来損ないでした…はい…」
千山君からの視線を受けて話した億田君は、凄まじくどんよりとした雰囲気をもたらして話し終えた。周囲からは「大丈夫だよ」とか「気にすること無いよ」とか優しい言葉が飛んでいる。
良い人達だなぁと傍目に見ながら、私は億田君に少なからず共感していた。私も今は天文部で割と活躍出来ているものの、中学校には天文部が無く、無理に繕った出来損ないの美術部員だったからだ。
授業と部活なら断然授業の方が大切なのだろうけど、なんと言うか、無理に入った部活に対する気まずさとか引け目とか、申し訳無さがなんとなくわかるのだ。
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