夕食 ページ39
___そんな話から、早いこと数時間。4人とも小型カメラと録音機は隠したとのことで、私達は気楽にトランプをしていた。
それは楽しい時間で、本当に修学旅行のようだった。
『皆さん! 夕食の準備をしますので、一旦自室にお戻りください! 』
ババ抜きの決着が着く直前、サイコの声が耳をつんざいた。「これだけ終わらせよう」という弐筱君の提案により、残った私が同じく残った滝十君のトランプを1枚引く。
「っよし! 」
「ああ負けた! 」
3抜けで勝利した私は、機嫌よくトランプを片付けた。立ち上がると、スカートの中に外気が入って程好く涼しかった。
その時私は、"あること"を思い出した。それでも尚、トランプの方が余程有意義な時間だったと思った。
「探索、しなかったね」
自室までの廊下、弐筱君との会話。弐筱君も同じ気持ちらしく、「楽しかったしいいじゃん」と微笑んだ。
そうだよね、見た感じ共同スペースには仕掛けもないし。少なくとも、トランプを含むカードゲームやボードゲームがある棚にはなかった。
「じゃあ、また後で」
自室に入ってすぐ、ベッドにダイブした。いやはや、トランプは頭を使う。
「豪華だなぁ…」
相変わらずまともな食事に、各自感嘆の声を漏らす。夕食はうどんで、「ご自由に」と言うように卵黄や葱などが置いてある。
『どこで食べるかはご自由に! それでは、また明日! 』
突然の放送は突然切れ、私達は気にせずそれぞれの皿に手を掛けた。
しかし直後、再び放送前の独特な音が聞こえた。
『ちなみに! 明日は推理を行いますからね! 』
…推理か。結局探り合わないといけないのか。折角、ここで仲良くなった人もいるのに。
放送は切れたものの、しばらく皆顔を見合わせていた。
「…やだねぇ…」
四井さんの呟きに、頷く者と黙る者。本当は皆、そんなことしたくないんだと思う。
張り詰めた空気を破るように、2回手を叩く音がした。
「おい、早く飯食おうぜ! 」
…七瀬、馬鹿だなぁ。本当は、昨日から時々暗い顔してるのに。皆と同じように悩んで、同じようにストレスを抱えてるのに。
「七瀬」
「ん?」
「…ありがとね」
七瀬は一瞬ポカンとした後、目を細めて笑った。いつも通りで、やはり安心する。それはそうだよね、もう3年は一緒にいるんだし。
………そういえば、弐筱君とはまだ2ヵ月しか一緒にいないんだな。
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キリカゲ(プロフ) - なっちさん» コメントありがとうございます…!お褒めの言葉を賜り光栄です。この小説に需要があったということに感激しました…尊敬だなんて勿体無いくらいです。ほぼ自己満足状態ですが、少しずつ続編の更新もしていきますので良かったら宜しくお願いします! (2020年12月28日 18時) (レス) id: 696f81e61f (このIDを非表示/違反報告)
なっち - 続編に行っているようなので読まれないことを承知で書きますが、この小説、とても好きです。私はこういう複雑な人間感情を書いた小説を面白いと感じるのですが、こんなに複雑で面白い感情の小説をかける作者様、尊敬します。これからも頑張ってください! (2020年12月28日 16時) (レス) id: 8cb8225128 (このIDを非表示/違反報告)
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