探索 ページ35
「大丈ー夫、急ぎの用事でもないしさ」
精一杯の微笑みで、私はゆっくりと答えた。弐筱君は、ごめんと呟いた。
それから、しばらくの沈黙が訪れる。きっと思っていることは同じで、話題がなくなってしまったのだ。
「あのさ、もう少し探索しない?」
突然切り出された言葉に、思わず肩が跳ねる。落ち着いて、冷静にその言葉の意味を問う。
「何を?」
「この場所全体。まだよくわからないし」
確かに、ここには仕掛けが無数にあるんだと思う。廊下が現れた時だって、シャッターはすっかり壁に溶け込んでいた。
もしかすると、この部屋にもまだ何かあるかもしれない。
「そうしようか、まずこの部屋探す?」
「え、いいの?探しちゃって」
弐筱君は、本当に気を遣う人だ。
「いいよ、探そう」
まず、ベッドの下でも探ろうか。ローテーブルの下にも仕掛けがあったし、ここにもある可能性がある。
(…ないか)
目を凝らしても、見る限り仕掛けはない。どうやらベッドは安全そうだ。
とは言っても、枕のお札は気になるけど。
その時、突然弐筱君が声をあげた。
「どうした?」
「このお札…大丈夫?何か起きてない?」
慌て気味の弐筱君に、つい笑みを溢してしまった。弐筱君は少しだけ頬を染めた。
「…もしかして、心霊とか苦手?」
「いや、あの…Aさんは平気なんだ?」
弐筱君が心霊苦手なんて、なんだか意外だ。一通り反応を見た後、私達は探索を再開した。
それにしても、このお札はなんなんだろう。
ソファーには、何かあるだろうか。初日には、クッションの下に弐筱君の写真があった。
そういえば、サイコは全員にこんな豪華な部屋を用意しているんだろうか。
「部屋って、皆こういう感じかな?」
「そうじゃないかな…俺の部屋はほぼ同じ」
ここは、ホテルか何かの一部なんだろうか。そう思う程、この場所は綺麗で整っている。
続いてソファーの下を覗いたその時、1つの小さな鍵を見付けた。
この部屋に鍵穴はないはずだが、なんなのだろう。
「何かの鍵があったんだけど、持っておいた方がいいかな?」
「鍵?」
弐筱君にその鍵を見せると、手に取り観察し始めた。しかし弐筱君は、すぐに眉をひそめた。
「ごめん、よくわからなかった。とりあえず、持っておいたらどうかな」
弐筱君は曖昧に答えた。
…とりあえず、持っておくとするか。
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キリカゲ(プロフ) - なっちさん» コメントありがとうございます…!お褒めの言葉を賜り光栄です。この小説に需要があったということに感激しました…尊敬だなんて勿体無いくらいです。ほぼ自己満足状態ですが、少しずつ続編の更新もしていきますので良かったら宜しくお願いします! (2020年12月28日 18時) (レス) id: 696f81e61f (このIDを非表示/違反報告)
なっち - 続編に行っているようなので読まれないことを承知で書きますが、この小説、とても好きです。私はこういう複雑な人間感情を書いた小説を面白いと感じるのですが、こんなに複雑で面白い感情の小説をかける作者様、尊敬します。これからも頑張ってください! (2020年12月28日 16時) (レス) id: 8cb8225128 (このIDを非表示/違反報告)
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