66(涼太Side) ページ16
この闇に包まれている時だけ、身体に纏わりついた地球の重力やエネルギーから解放されて自由になる。
誰の為でもない、ただ好きな人のために呼吸が出来る。
―― 少なくとも今は、生きるために呼吸している。
涼太「俺は良く生きてるよ、ほんとに……」
―― 君もちゃんと生きてるよね？
俺は一人で愚痴る。
今日も自分なりに頑張ったと思う。
家に帰って来ただけで凄い。
俺は「お疲れさま！」とかつて何度も聞いた声を脳内で再生してみるが、うまく思い出せなくて、結局自分の声寄りになってしまった。
―― おい、見てるか？俺はまだ、お前のことが忘れられないよ。
俺は心の中で俺の”彼女”に話しかける。
軽く溜息を吐いた。
未だに返事を期待している自分がどこかにいる。
しかもそれは一人の宮舘涼太じゃない。
嬉しい宮舘涼太、悲しい宮舘涼太……
様々な感情を持つ心の中の俺たちが決して返って来ないあの声を待ち望んでいる。
いい加減忘れないといけないことは分かっているのだ。
もう十分苦しんだし、あの幸せな日々が二度と帰ってこないこともよく理解している。
なぜなら、それを壊したのも自分だからだ。
それでも、ふと思い出して焦がれてしまうのは、癖だ。
骨の髄まで染み込んでしまったどうしようもない習慣なのだ。
暖房をつけるのを忘れていたため、部屋は氷で一面覆われているみたいに寒かった。
俺は低く唸りながら布団の中に潜り込む。
引っ越しを機に買い替えた新品の布団だ。
佐久間大介と一緒に買いに行ったホームセンターの独特の匂いが染みついている。
いつか、この布団の匂いが変わるときが来るのだろうか。
俺はぼんやりと暗闇を見据えながら考える。
精油くさい布団を鼻の上まで被って、冷えた足先を擦り合わせた。
変わってしまうとしたら、それはいつだろうか。
明日もし天日干ししたとして、すぐに他の匂いに書き換えられてしまうものだろうか。
こんなに強烈に染み込んでいるというのに、あっさり太陽の匂いにすり替わるのか。
同じように、俺を取り巻く亡霊のような執念が、いつか他の人間への愛情や想いに塗り替えられてしまう時が来るのだろうか。
そうなった時、あの人は喜ぶのだろうか？
それとも、悲しんでくれるのだろうか？
居なくなってみて、初めて気づいた自分の思い。
俺の綺麗で可愛い”亮平”は今、誰を思っていますか？
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雛(プロフ) - まりなさん» お返事遅くなり、申し訳ありません(汗)コメントありがとうございます！本編が終わってからになりますが、リクエスト書かせていただきます。こちらこそ、これからも末永くご愛読のほど宜しくお願い致します。 (2022年1月25日 20時) (
レス) id: 9f89b51e27 (このIDを非表示/違反報告)
まりな - 初めまして、雛さんの作品をいつも楽しみに読んでいます！リクエストなのですが、このお話の中に出てくる登場人物の過去編や未来編、だてさくメイン編も読んでみたいです！宜しければ書いてくださると嬉しいです！ (2022年1月22日 13時) (レス) id: 4c6ff4de06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：雛
| 作成日時：2021年9月19日 20時
