#Dragon Fang...10 ページ12
・
『......』
___ふと、思い出す。
こうして空を眺めるのは、昔からの云わば習慣のようなものではなかったか。
ちょっとした気分転換。
奥州を一望できる山に、政宗公はよく登っていた。
私を帯刀しながら、何も言わず、何も考えずに、ただ城下町を見下ろす。
一方の私は、その隣で見下ろすではなく"見上げていた"のだが。
竜が駆け上がるべき蒼空。
見渡す限り広がる雄大な光景に、彼は己の夢や野望を重ねていたのかもしれない。
『...やっぱり、空は晴れているのが一番いいな』
「...そうか」
『___!』
思わぬ返答に、肩が跳ねる。
すっかり独り言のつもりだった。
伽羅にはしっかり拾われてしまったようだ。
...真夏日だから、直射日光が当たる屋根上は無茶苦茶に暑い。
それでも吹いてくる風はめっぽう爽やかで、私たちの頬を微かに撫でた。
___気持ちがいい。
暑いのは確かにそうだけれど、それよりも、大好きな空を見ていられるのが嬉しかった。
...どちらも何も言わないまま、幾ばくか時が流れる。
先に口を開いたのは、珍しいことに伽羅の方だった。
「...そろそろ審神者室に戻るぞ」
『?...あそこにはもう用事は無いんじゃないのか?』
「お前の部屋割りを聞いてなかった」
『...納得です』
伽羅の言う通り、自分の部屋を知らなければ帰るところがない。
審神者室以外の何処に行こうとも、行くことが出来ないのだ。
__なら、仕方ない。
もう一度、あのおちゃらけてるのかしっかりしてるのかよく分からない主に、お目通りを願ほか、なさそうだ。
「それに___、」
『......?』
一瞬口をつぐみ、伽羅は眼下の本丸前へ視線を移す。
つられて下を覗いてみると、六つの人影が、ちょうど本丸へ入っていくところだった。
...全員、戦支度を整えている。完璧な武装だ。
あの様子なら、遠征から帰ってきたばかり、ってところかな...。
一部の刀剣が傷つきはしていたが、大怪我を負った者はいないらしかった。
「あの中に光忠と鶴丸もいる。遠征から帰還したら、まず最初に主に報告するのが決まりだ」
『ふむふむ』
「俺は一度部屋に戻る。...貞を呼んでくるから、その間に主から自分の部屋と今日の割り当てでも聞いておけ」
『わ、分かった...』
私の返事を聞くよりも早く、伽羅はこちらに背を向ける。
屋根を踏み締めながら、スタスタ歩いて行く。
その背中がだいぶ小さくなったころ、ふと辺りを見回してからタンッ、と瓦を蹴り、彼は悠々と姿を消したのだった。
・
#Dragon Fang...11→←#Dragon Fang...9
438人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
*紫苑*(プロフ) - 瑠色さん» ご指摘していただきありがとうございました!早急に直しました。おっしゃる通りですね...以後気を付けますが、もしまたこのような事がありましたら、遠慮なくコメントしてください! (2019年2月18日 19時) (レス) id: 9bd0eaa6f6 (このIDを非表示/違反報告)
瑠色(プロフ) - 失礼します。そねさんは長曽祢虎徹です。蜂須賀さんも虎「徹」です。
細かいですが、銘は大切なものなので、気をつけてください。 (2019年2月18日 1時) (携帯から) (レス) id: 04ea405d06 (このIDを非表示/違反報告)
*紫苑* - 月夜桜さん» コメントありがとうございます!刀剣乱舞の伊達組メインのお話って意外と少ないですよね〜。作者による作者の為の俺得小説とはまさにこれですが、それでも伊達組沼に共感してくださる方がいて、とっても嬉しいです(≧▽≦)頑張ります! (2018年9月27日 6時) (レス) id: 9bd0eaa6f6 (このIDを非表示/違反報告)
月夜桜 - すごい面白かったです!伊達組メインとか俺得!これからも更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 19時) (レス) id: d530b8b740 (このIDを非表示/違反報告)
ぐじゅぇり - 喧嘩上手の戦上手の…………喧嘩はわからんが、うちは薬研が一番レベル高いよ。 (2018年9月4日 19時) (レス) id: f643507f9d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:*紫苑* | 作者ホームページ:http://twitter.com/wakagi415
作成日時:2018年8月18日 20時