双黒好きによる双黒好きのための双黒の話【３】

妬かせないで.太宰治 (リクエスト) ページ9

人通りが少ない帰り道を、太宰と二人。
他愛の無い話をしながら、足を進めていた時。

わんっ、と快活な声が聞こえた。

視線を向ければ、其処には緑色の首輪をつけた
柴犬の、真ん丸な二つの黒目。




「……わぁ、可愛い…。

ねえ太宰、この子飼い犬だよね。
届けてあげた方がいいのか、な……」



よいしょ、としゃがみ、
柴犬の頭を撫でながら、太宰に問いかけ_____


_____隣には太宰の姿は無かった。



「…いや、太宰、何してるの？」


「何してるのは此方の台詞だよA！
私は犬が苦手で___…

…ふふ、っい、否、苦手では無いのだよ！
只、少し近寄り難いだけなのだ！ふっ、ふふ！」



近くにあった自動販売機に身を隠し、
何故か頭を上下に振りながら不気味に笑う太宰。

さながら不審者の様な彼を横目に、
この犬を如何するか考える。



「…いやでも、届けるしか、ない、かなあ」






・
・





「〜っ……だ、ざ…いっ！」



その後、私は無事にあの犬を
飼い主の元に届ける事が出来た。

一件落着かと思いきや、
家に戻ると、犬が如何しても苦手で、
先に帰った太宰が、私に飛びついてきた。

……そして現在は、あろう事か寝台の上である。



「っぃ…っ、！」


「…………これで、三個かな。」


「っ、つけ、すぎ…！」



ちゅ、と絶えないリップ音。
ちくりと走る首筋の痛み。

溶けたお菓子のように甘い、太宰の声。




「も、太宰っ、てば…！…っひぇっ！」

「…ん〜…、何だい？」



良い加減、太宰の顔を離そうと、
必死に伸ばした手は、いとも簡単に掬われて、
そのままぺろりと指先を舐められた。

その子犬のような仕草に、ぴん、と脳内が震える。
彼が突然こんな事をする理由って、まさか。



「_____もしかして、あの犬に…妬いて、る…？」

「……！」



動きが、一瞬にして止まる。

あれ、でも、これ、
私、物凄く恥ずかしい事を云ってるんじゃ…。



「…ぅだけれど、？」

「…えっ…？」





「_____っ、だから、
そうだって云ってるじゃないか！」




出かけた言葉が、強引に甘く塞がれる。
何時もより余裕のない、何処か焦ったようなキス。

途端に、愛おしさで胸が満たされて、
笑みが溢れてしまう。







「…嗚呼最悪だ、恥ずかしくて死んでしまうよ。

……………もう絶対、妬かせないでおくれよ」





不服そうに呟いた彼の真っ赤な頬に、
「うん、絶対」と笑いながら、唇をくっつけた。






……

どんぐり様、リクエストありがとうございました！

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