【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ32)

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戦えないわけではないが、あれからもポケモン勝負を続けていた彼とは天と地の差があるだろう。したところで、という感じだ。
「......続けてれば良かったな。あなたとの勝負、きっと楽しいだろうな」
　かといって、やめた選択をした事に後悔はしない。他に道を見出しただけだ。
「......」
　......会話が気まずい。こればかりは自分のせいだ。ふと手に持っていたサイコソーダを思い出した。
「......そういえばさ、さっきの自販機また変になってて、このソーダが出てきちゃったんだよね。よかったら貰ってほしいな」
「...また押し付けようとしてる？」
　流石に鋭い。確かに、この寒さの中じゃほぼ嫌がらせだ。
「あ、あはは......」
「ソーダは貰わないけど、お礼はしたいな」
　彼がコーヒーの残りをぐいっと飲み干した。
「コーヒーが美味しいお店を知ってるんだ。今から一緒に行こうよ」
「えっ、そうなの？ぜ、是非」
「あと名前と電話番号も教えて」
「え？いきなり何、どうしたの？」
　唐突にぐいぐい来すぎて怖い。
「ぼく、トウヤっていうんだっ。きみの名前は？」
「わ、私はA...」
　寒いからか、彼の頬が赤く見える。なぜか緊張してきた。
「これからよろしくね、A！......名前、Aっていうんだ」
　一生知らないままじゃなくて良かった。彼の白い息がそう吐いた。
「私も、トウヤがただの思い出の人になるところだったな」
「......思い出？」
「トウヤはね、自分についてよく考えるきっかけになった人だから。勝負をやめたのも、悪い意味があったわけじゃないよ」
「...そっか、そうなんだ。良かった」
　彼が安心したように微笑んだ。少しでも心配をさせてしまって申し訳なく感じる。
「......寒いし、早くあったかいコーヒーが飲みたいな。トウヤ、そのお店教えてよ」
「......！うん、勿論！ここから少し歩くことになるんだけど、大丈夫？」
「大丈夫だよ。地方を跨ぐとかじゃなければ全然」
「あはは、そこまでじゃないよ。お店はこっちから行けるんだ」
　彼が歩き始めたのを追いかけて、横に並んだ。空気は冷たいままなのに、なんだかあたたかい。不思議と、コーヒーを飲んだ時のように落ち着く気がする。
「着いたら、ゆっくりきみと話したいな」