【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ4)

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「わかった、そっちに行ってみるね」
　とりあえず、彼をめがけて足を踏み出す。恐らく、ほぼ歩いているような見た目になっているだろうが、一応は滑っているつもりでゆっくり進んでいる。私にとっては、十五メートルは長くもなく短くもない絶妙な距離。集中していると、もうカルムがすぐ目の前にいるのに気づいた。彼はなぜか腕を広げている。やり方がわからないなりに曲がろうとしたが、時すでに遅し。腕の中に入り、カルムに尻もちをつかせてしまった。
「だ、大丈夫？カルム下敷きにしてごめんね」
「大丈夫、わざとだよ」
「わざと...？」
　思えば、かなり密着した状態だ。しかも私が覆い被さるようになってしまっていて、早く離れたい。異性とくっついて気にしないでいられるほど、私のメンタルは強くないのだ。離れようとした時、背中に腕をまわされる。
「ダメ。このまま」
　いつもより落ち着いた、低い声。すぐそばの彼の髪が、伝わってくる温もりが、どうしても彼を意識させてくる。
「...ど、どうしたの」
　自分の気持ちを誤魔化すために、声だけに集中する。
「チャンピオンになるまで、会いに行かないようにしてたんだ。俺がいない間に、Aが他のやつにとられてないか不安だったけど...」
「...え、まだ一ヶ月も経ってないよ」
「急いだんだ」
　息が耳にかかるくらいの近さで言われる。
「好き」
　その言葉が私の中で反響して、胸が高鳴る。顔に熱が集まるのが自分でもわかった。
「...A。俺が世話を焼くのは君だけ。君が思ってるほど、俺はそんなに優しくないよ」
　囁かれるほど、体に力が入らなくなってくる。言われる言葉の一つ一つがぐるぐるして、もう混乱しそうだ。
「君に言ってほしい言葉があるんだ。言ってくれるまで離さない」
　まわされた腕が固くなる。一ミリも離れていないから、自分の鼓動が伝わってしまいそうだ。何も心の準備をしていない。でも、いつ誰に見られるかわからない。聞こえる彼の吐息でもうおかしくなりそうだ。深く考えようとするのをやめて、抱きしめ返す。そして、私は口を開いた。