【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ29)

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自販機の、缶コーヒーのあの人　トウヤページ29

____ガシャン。
　最近のポケモン勝負は負けばっかりだ。最後に勝利はいつだったか、記憶が曖昧になってきた。
　重い気分を紛らわしたくて買った、缶のブラックコーヒーを取り出した。かじかんだ手を早く温めたい。......あれ、ホットのはずなのになぜか冷たい。
「あの、その自販機、今中が変になってるみたいなんだ」
　後ろから男の子の声がした。振り向けば、缶の飲み物を手に持ったキャップの男の子が立っている。
「本当だ。買いたかったのこれじゃないのにな......」
　出てきたのはサイコソーダだった。コーヒーでも缶でもない。
「ぼくも違うのが出てきちゃって。ぼく、コーヒー飲めないんだ......」
　見るからにしょんぼりしている彼の手には、私が買いたかったそれが握られている。彼が飲めないのなら、できればこのソーダと交換してほしいものだ。
「...ところで、何を買うつもりだったの？」
「あったかいミルクティーを買いたかったんだ。甘いものが欲しくて。何より寒いし......」
　流石に、ピンポイントになんてことは起きないか。ミルクティーを買って交換しよう。お金を入れボタンを押すと、無事にミルクティーが出てくれた。
「あ、良かった、ちゃんと出た。ねえ、よかったらそのコーヒーと交換してくれない？」
「えっ、いいの？これブラックコーヒーなんだけど......」
「それ私が飲みたかったやつなんだ。苦手なら、持ってても仕方ないでしょ？」
「......ありがとう。正直困ってたんだ」
　彼から白い息。お互いの飲み物を交換すると、さっきのミルクティーの熱さに比べると缶コーヒーがぬるく感じる。さっさと開けて中身を口に流し込むと、期待した通りの味に対して、期待していたほどの熱さは無かった。
「コーヒー、飲めるんだね」
　随分驚いた顔で彼が言った。
「うん、おいしいからつい。眠い時とか、重い気分の時とか、飲むと気が紛れるし」
「......そうなんだ...ぼくと同じくらいなのにすごいな。ぼく、甘い物ばっかり好きでさ。だからなのかな、苦いのが苦手なんだ...」
「私も甘い物好きだし、あんまり関係ないと思うなぁ」
　またコーヒーを口に含んだ。それに伴ってお互い静かになる。知らない人との会話ってこんなものだろう。そう思いたい。少しでもぼーっとすると、すぐバトルのことが頭をよぎる。この人も、ポケモントレーナーだったりするんだろうか。だとしたら、きっと私より強い。私でもなんとなくわかる。