【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ20)

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続きページ20

「Aさん、荷物持たせてくださいよぉ......」
「やだよ、私の荷物なんだから」
　私が両手に持っているのは、私の趣味の物は勿論、服が入った紙袋もある。本当は服を買うつもりで外に出ていたわけではなかったのに、彼が楽しそうに"似合う"と言ったのだから、買わないなんていう選択肢は無かった。
「......ずるい」
　ぼそっと彼が言った。聞かれてもよかったのかもしれないが、私は聞き逃さなかった。
「そうかもね」
　きっと、彼は私が何のために連れ回したのかわかっていないんだろう。とはいえ、突発的に起こした行動だ。今、彼を連れ回しているのに大した理由は無い。
　今更ではあるが、正直、彼が好きだ。キョウヘイといるのが楽しくてしょうがない。自分勝手だけれど、自分の気持ちを伝えたい。
「ねえキョウヘイ、こっち通ってもいい？」
　私が指したのは、人通りの無い路地裏。記憶が確かなら、行き止まりだ。
「えっ、そっちですか？」
　キョウヘイが困惑している。当たり前の反応だが、彼の目をじっと見つめて別の返答を待った。
「......いいですよ。ぼくがいますから」
「ありがとう。キョウヘイ」

　想定通り、誰ともすれ違わない。誰もいない。
「この道って、どこに繋がってるんですか？」
「どこにも繋がってないよ」
「えっ」
　立ち止まって、振り返る。驚いているキョウヘイがそこにいる。
「キョウヘイ」
「......Aさん......？」
　入口を背にしているキョウヘイを、腕で誘導して壁に背をつけさせる。手に持っている荷物をそのまま床へ置いて、袋が倒れるのも気にせず壁に手をついた。
「......え、A、さ......」
　彼が見るからに戸惑っていて、気のせいかもしれないが、少し顔が赤い。
「嫌だったら、すぐに突き飛ばして」
　少し、十数秒くらいかを待った。緊張を見ないふりして、目を見続けた。その間彼は何も行動を起こさず、どこか怯えた瞳で私の行動を待っていた。
「......キョウヘイ」
　そっと両手で、彼の頬に触れた。それは意外なほど温かく、そして抵抗もされない。変な状況だが、やっと言おうとした、その時。
「......あ、A、さん......」
　彼の瞳から、一粒、二粒と、涙が溢れ始めた。
「Aさん、なんで、どう、して......っ」
　きっと、"どうしてこんな事をするんですか"、と言いたいのだろう。彼に触れている手に涙が落ちる。