【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ14)

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「あのさ」
　マサルが言った。
「......Aはさ、最初から俺を応援してくれてたよな。俺が参加するって言った時から......ジム戦だって、ついてきてくれた」
　彼がぽつぽつと語り始める。最中に、彼が手を離した。
「強い奴なんか他にもいるってのに......こんな所にまでついてきて」
　彼はゆっくりと息を吸って、次の言葉を言おうとした。彼の目から涙が溢れ、必死に腕で拭う。
「勝ち、たかった。でも俺は強くなかった、強いんだって誇りが、あった、のに」
　時折、彼の声が裏返る。
「Aがずっといたのに、申し訳なくて......っ」
　彼にかかる葉の影が揺れている。まとまらない言葉に、彼の本心がいるんだろう。彼は、周りに誰もいない所で、やっと気持ちを吐き出せるらしい。
「なんで、今日、俺のところにきたんだよ......もう、俺のところに来なくていいだろ、こんな、お前にメリットなんか無いのに」
「マサルを応援してるから」
　でも、ここに私がいる。今、彼の目の前に、私が。彼が私の前で気持ちを吐き出したのに、私が本心を言わない道理はない。
「私は、マサルを応援してるから来たの。確かに、マサルは勝負に強いよね。私も勝って欲しいって願ってた」
　彼の両手を掴む。少しでも私の気持ちが伝われば。
「マサルは強いよ。トーナメントまで残れるなんて、普通の人じゃできない。でもね、私がマサルを好きなのは、それが一番じゃないの」
　もう一度彼の手を握り直す。ほんの少し、彼が握り返してくれたような気がする。
「観客の前。少しでも人がいたら、もしくは大勢の前でも、マサルは堂々と立ってる。勝負が終わっても最後まで気を抜かない。本当に、それがかっこいいんだ。負けた時だって、観客の前で泣かなかったよね」
　彼から、涙が何個も零れ落ちていく。しかし、彼は私の手を更に強く握った。
「今も、マサルのことを応援してるよ。だって、マサルは強いんだもん。本当にかっこよかった」
　一つ一つ丁寧に言おうとしていたが、言っているうちに自分でもよくわからなくなってきた。
「......Aさ、ほんと......言ってくれるよな」
　彼は笑って、涙を流している。
「ご、ごめん......？」
「......Aはさ、俺が次も参加するって言ったら......」
「勿論、応援するよ」
　私がそう言うと、マサルは安堵したように笑って、
「次は絶対に勝つ。だからさ、A。ずっと、俺だけを応援して欲しい」
　決意の目に、私はまた彼の強さを見た。