【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ13)

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続きページ13

「本当は、チャンピオンになったらAに言う事があったんだ」
　開拓の跡が無い森を歩く。彼が一度ぽつりと言ったきり、一言も喋らない。時々野生のポケモンに出会うが、マサルがポケモンを使って簡単に追い払う。強そうなポケモンに対しても臆しない彼を見ると、やっぱりマサルは強いんだと思ってしまう。勝負にもしもはないけれど、もしもう一度あの試合をやり直せたなら____なんて言ったら、マサルにも、他の挑戦者達にも、その他の人達全員にも失礼だ。

　重たい霧の中に、陽の光がさすのが見えた。さっきまでの景色とは少し違うのに気づいて、辺りを見回した。そんな私の様子に気づいた彼も辺りを見回す。同じ歩幅で同じスピードで歩いていた私たちが、同時に足を止めた。
「____ここ、なんだ？」
　マサルが言った。木漏れ日が、現代とは思えない幻想的だ。しかし、見たことがないこの場所に戸惑ってしまう。周りは湖で、少し遠くに古いオブジェがある。遺跡のように見えるそれに、私は興味を持った。
「ねえ、あっち見に行きたいな」
「俺もだよ。行ってみるか......」
　手を繋いだまま、歩き始める。今更だが、マサルは異性同士が手を繋ぐのを気にしないのだろうか。一瞬指を開いても、彼が気にかける様子はない。遺跡に着き、階段らしき段差を登る。意味ありげな苔の生えた石のオブジェがある。そして、その石の手前には......
「剣と、盾？」
「随分と錆びてるな、これ。本当になんなんだここは......」
「......触るのはやめたほうがいいかもね。後に考古学者とかが来たら、困っちゃうかも」
「それもそうだな。にしても、こんな所があるなんてな......」
「そうだ、ここで休憩しない？ちょっと疲れたかも」
「......A、そうだよな。走って来てたのに、ずっと歩かせてごめんな」
「でもさ、マサル、私に合わせてくれてたよね。本当はもっと速く歩くでしょ？」
「......そうかな。全然そんなつもりはなかったんだけど」
　ピコン、と私のスマホが鳴った。取り出してみると、私がフォローしている主にニュースを呟くアカウント。アプリを開いて本文を読むと、"新チャンピオン"の文字。どうやら、ユウリちゃんがダンデに勝ったらしい。
「......ユウリ、勝ったんだ」
　マサルが呟いた。画面を見られるとは思わず、気を使わなかった自分を反省する。それよりも、私は何と言うべきか。気にする方が彼は余計に傷つくだろうか。