【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ12)

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強いから、じゃなくて　マサルページ12

(マサルとユウリどちらもいる世界線です。)

　世間が、トーナメントの最終戦で盛り上がっている中。折角とれたチケットを捨て、私はマサルを追いかけた。

　彼はジムバッジを八つ集めて、トーナメントへの挑戦権を得た。今年残ったのはたった四人。その少ない人数の中に彼がいるのが、私はものすごく嬉しかった。
　マサルは、一回戦でホップに敗北した。トーナメントに落ちた彼の気持ちなんて計り知れない。それでも、彼は観客の前では笑顔を絶やさなかった。挑戦者なのに、観客の前にいる事を忘れない。チャンピオンにも匹敵するような精神力に、私は本当に心を打たれた。
　試合の後、私はマサルに会いに行った。熱狂の止まない夜の外で「マサル」と声をかけた。暗がりの中、彼が涙を落としたのが頭から離れない。

　彼に電話をかけると、まどろみの森にいると返ってきた。そんな所で何をするつもりなんだ、と駆け足で向かう。自分の脚よりも速い電車に乗ってる時でも、頭の中が不安で埋め尽くされる。

「____マサル！！」
　マサルの姿を見つけて、更に駆ける脚が速くなる。どうやって探そうかなんて考えていたが、彼は思いの外入口の近くにいてくれていた。
「......A、本当に来てくれるんだな。チケット取れてたんだろ？いいのかよ」
　マサルは驚きつつ、いつもより投げやりに言い放つ。
「マサルと一緒に見るつもりだったからいい。それよりも......良かった、何もなくて」
　彼は、私がどんな想像をしていたのかを察したらしい。
「......しないよ、そんな事。Aが来るかもしれないのに.....待たせらんないだろ」
「私がいなくてもしないで。そうだ、ご飯食べに行こうよ。お昼まだ食べてないでしょ？」
「......いや、俺はいいや」
「そう？じゃあ私もいいや。マサルはこれからどうするの？」
「ほんと、お前って......俺はこの森に入るよ。ちょっと頭を冷やしたいんだ」
「じゃあ、ついていくよ」
　こう言ってから、鬱陶しいと思われているのではと今更気づいた。心配だからって、何でもしていいわけではないのは自分も知っていたはずなのに。彼の顔は変わらず暗いままで、もしかしたら私の出る幕は無いのかもしれない。そう思っていると、ふと私の手が包まれた。手に目を向けると、マサルが手を繋いでいた。
「......ありがとう、A」
　いつもより下がったトーン。その割に彼は握る力を強めてくる。どんな気持ちなのかは、挑戦者でない私にはわからない。