【短編集】うわっ...私のレート低すぎ...？【pkmn】 (ページ2)

今日:13 hit、昨日:7 hit、合計:14,188 hit

続きページ2

トウヤの、息をつく声が聞こえた。重たい空気に観覧車の音が響く。
「...その好きな人って、僕じゃない...よね」
　一呼吸おいて、うんと答えた。帽子のつばで隠れた顔。つばを持つのは、彼の普段からの癖だ。何個か、光がぽたぽたと落ちたのが見えた。これ以上私が何かを言ったって、どれも余計になってしまうだろうか。なんとなく姿勢を正すと、トウヤが立って_____抱きしめられた。座席に片膝を置かれている。しかし、どんなに考えてもさっきまでの事と今の状況が結びつかない。
「...と、トウヤ？何、なんで、どうしたの」
「好きな人って、誰」
　知ってどうするのか。こんな突飛な行動ができるのなら、言ってしまえば何が起きるんだろうか。
「言わないよ」
「...へえ。信用されてないんだ、僕」
「...まだ、何かあるの？」
　そう言うと、腕を解かれた。もう終わりかな、と予想したが今度は肩を掴まれる。顔を見上げると、淡々とした言葉の割に、涙を浮かべて辛そうな顔をしていた。
「本当は、君が僕を好きじゃなくても良いんだ。でも...他の人を好きになるのは許せない」
　だんだん、掴む力が強くなる。
「君がいつも寄り添ってくれたのは、友達だから...どうせそうなんだろ。駄目だよ、下手にそんなことしたら。された方は友達どころじゃないんだ」
「...悪くしようとしたつもりじゃ」
「ないって、勿論わかってるよ。大丈夫、本当はAのいいところだから」
　トウヤって、こんな人だっただろうか。彼自身の力と重みで、反抗のしようが無いと思ってしまう。「観覧車が地上に着くまで待てばいい」という希望も相まって、尚更抵抗する気は失せる。思えば...彼は、普段の笑顔の裏にどれほどの感情を秘めていたのだろうか。
「ねえ、A...A、A...なんで...」
　涙がぽつぽつと落ちると、全部私の衣服に吸われていく。彼の涙を拭ったのが仇になるのなら、私はこれ以上何もしない。そんなつもりはなかった、と今更言ったって何も変わらないのだから。
「A...お願い、僕だけを見て」
　あと少しの辛抱。彼の片手が私の頬に添えられるより前に、私は彼から視線を外した。何されても、観覧車が地上に着くまでの辛抱だ。最後。最後だから、今だけは何をされても許してしまおう。もう彼と関わらないようにするつもりだ。だから、私が最後にしてやれる事といったら、黙って受け入れるしか無いような気がするのだ。