弟が白い髪を切った件。 (ページ1)

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兄さん。ページ1

「‥‥A、‥髪、また切ったのかよ。」
帰省してきた兄さんが言った。

夕食をサボって抜けていた僕は偶然水浴びで居合わせてしまい、僕が引き返す前に声を掛けて来たのだ。

ちなみに、キングスカラー家には一応風習がある。

今回兄さんが言っているのは百獣の王の風格を持つために「髪を一定以上切ってはいけない」という物だ。

僕からしたら無駄でしか無い。
髪を伸ばした所で僕は王には成れないのだから。

いや別に成りたくもないけど。

『別に良いじゃない。ほっといてよ。』

「‥テメェ、そういや今年高校だよな。」

『それが？』

「どこ行くんだ？」

『‥‥まだ、考えてない。』

兄さんは、何か言いたげに僕を見て、また何も言わずに視線を前に戻した。

「RSAなんてどうだよ？あそこは茶会ばっかやってっけどな」

『‥はいはい、じゃあ僕出るから。』

「A。」

『何。』僕は苛立たしげに振り返る。
そこに居たのは僕を真っ直ぐに見る兄さんの姿。

‥‥ああ、この瞳が嫌いだ。

僕は兄さんが何を言うかも聞かずに背を向けて水浴び場を後にした。

褐色の肌、チョコレートブラウンの髪、サマーグリーンの瞳‥

上げだせばキリがない。

血縁(王族)と”僕”の違い。

血色の悪い肌、真っ白な髪、水色よりも淡い瞳。
全部が違うのに。

ライオンの耳と尻尾だけは同じとか、ふざけんじゃねぇよ。
千切れろ。

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しばらくして、僕のもとにRSAからの招待状が届いた。

少し遅れてNRCからも。

僕は迷った末、RSAを選んだ。
兄さんの言うことを聞いたんじゃなくて、兄さんとは違う学校に行きたかっただけだ。

兄さんは、ここ二年で変わった。

理由は不明だが、学校で誰か、か何かに出会ったんだろう。
雰囲気すらも柔らかくなった。

まぁ、だから何だというのか？
僕にもわからないが。