あの空の果てまで〈完結〉

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結婚の報告をされてから、何度か三人で食事をしたり、飲みに行ったりするうちに、俺たちはすっかり打ち解けた。

もちろん俺は自分の気持ちはひた隠しにした。

表向きは彼女と付き合ってたし。

実際に結婚したら諦めもつくだろうって思ってた。



式は8月の大安の日に決まったみたいだ。

「なんでそんなあちー時にすんの。
スケジュールもタイトだし、秋にすれば？」

「秋はAの誕生日だから」

「誕生日？」

トシより3つ上のAさんは、どうしても30歳になる誕生日の前に式をあげたかったそうだ。


休日に彼女から会いたいって言われたけど、会う気がしなくて、適当に嘘をついて断って、ダラダラしてたらトシから電話がかかってきた。


「ごめんミツ！今日ドレス選ぶ日なんだけど、急に出勤になっちゃって！
悪いんだけどミツ代わりに頼めない？」

「はあ？！やだよ。Aさんだってトシに見せないと意味ねーだろ」

「Aはいいって言ってるよ」



そう言われて。

気は進まなかったけど、トシに言われた式場のフィッティングルームに向かう。

「これは？」

「んー…こっちのが似合いそう」

「じゃあそれ着てみる！」


「トシが休みの別の日にすりゃいーのに」

「スケジュールずらせないの」

「3つなんて歳の差あってないようなもんだし、トシは全然気にしてないと思うけど」

「それはみっくんが若いから言えるんだよ」

「そう？いーじゃん。大人の色気出してけば。
あ、Aさんにはないか」

「え！……ない！」

「認めんなよ」


そんなふざけたやり取りしてたくせに、フィッティングルームから出てきたAさんから、俺は目が離せなくなった。

真っ白なウェディングドレスを着たAさんは、いつもの比じゃないくらいきれいだったから。


「…どう？変じゃない？」

「……変」

「え？！」

「なわけ、あるか」

「もう！紛らわしいこと言わないでよ」


「……きれいだよ」


めちゃくちゃきれいだよ。

そんで、トシの隣に並んで立ったら。

たぶんもっときれいで。

幸せそうなんだろう。


トシとは何もかも似てないけど、お互い足りないとこを相手が持ってる、って思っていた。

トシはトシで。

俺は俺。


ずっとそう思ってたのに。


「じゃあ、これにする」

そう言って恥ずかしそうに笑うAさん。



俺は初めて、トシに嫉妬した。




8月のよく晴れた暑い日に、トシとAさんは結婚した。


俺が似合うって言ったドレスを着て。

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