人形の夢１ ページ7
一方そのころオレイユは、一人静かなダイニングテーブルでコーヒーを飲んでいた。
コーヒーの苦い味とともに、懐かしい過去を思い出す。
それは、まだシュピールに越してくる前の遠い遠い思い出。
(※オレイユ視点に切り替わります)
「もう動いていい？」
ショーケースに並んだ人形の一つが、こそこそと喋った。
「もういいわよ」
「やったぁ！」
私の了承とほぼ同時に声量を通常に戻した人形は、私のもとへ一目散に駆けてきた。
彼の名を、フウという。虎のぬいぐるみである。
「もう少し静かにしないと。店長はよく忘れ物をする人だ。忘れ物を取りに戻ってきたとき誰かの声が聞こえていたり、ショーケース内の人形の位置が変わっていたら怪しまれるだろう？」
テンションがやたらと高いフウを叱る、しかし優しい声の人形は、シュヴァンツ。キツネのぬいぐるみの彼は、このおもちゃ屋の最年長。店のことならなんでも知っている。
ちなみに二番目は私である。
おもちゃ屋の人形たちの中では、シュヴァンツは兄、私は姉的な存在だ。
「そうね、もうちょっと待って、店長が戻ってこなかったら遊びましょう」
夜中に人形たちが遊んでいることは、人間にはトップシークレットである。
秘密を守るためにも、子供たちの親である者が必要なのだ。
「はーい！」
二ヶ月前に入荷されてきた彼は、幼いなりに聞き分けが良い。子供らしさが残る部分もあるけど、これなら一人でもやっていけそう。
──私たちも、いつかは人間に買われていく。そうすれば、二度と再会することはないだろう。
もし私たちがいなくなっても自分たちでなんとかしていけるように、今から常識を覚えさせるべき。私とシュヴァンツは心を鬼にして、彼らを叱ってきた。もっとも、癒しポジションで優しいシュヴァンツは、怒っているのかよくわからないくらいに威力がないけれど。
実はこのシュヴァンツ、リーダーシップはあるのだ。決して気が弱いわけではなく、言いたいことははっきりと言う性格。叱り方が恐くないのは、怒っていないから。とっても心が広い、私の憧れの人形。そして──私が好意を寄せている相手。
「ボクも、いつかはこの店を出ていくんだね」
そう言うシュヴァンツの横顔は、どこか悲しげで。
彼は一番の年上。今まで、何度同じセリフを繰り返してきたのだろう。
待って、待って、待ち続けて。
誰かの目に留まる日を夢見て、どれだけの日を過ごしてきたのだろう。
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜！ 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました（笑） 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (
レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください！ (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです！ この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸｀*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました！ 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います！ (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜！ 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉月だんご | 作成日時：2019年10月19日 12時
