森の記憶２ ページ24
「いらっしゃい、Aさん……だったかのう？」
「こんにちは、カザーさ……ん？」
翌日、私とミティは『ドゥオールの逆迷子』について、“この街いちばんの物知り”と言われているカザーのもとを訪れた。
『ドゥオールの逆迷子』とは、外界からシュピールに迷い込む『ドゥオールの迷子』とは逆に、シュピールから外界に出てしまう現象の仮称である。私が付けた！
「……？ どうかしたのかい？」
「長老！！」
私が思わずひれ伏したのには理由があった。
目前で子守唄のようなゆったりとした口調で話すヤギは、現実世界で私が「長老」と名付けていたぬいぐるみだったのだ。
名前の由来は端的で、「ヤギのヒゲがＲＰＧでよく見る長老っぽいから」である。
「わしゃそこまで年食っとらんわ！！」
「いだっ」
彼が持っていた杖で頭を小突かれた。
声を上げるほど痛くはなかったが、つい。頭を低くした姿勢では私の頭はさぞ小突きやすかっただろう。
「まぁまぁカザーおじちゃん、許してあげて」
「うむ……」
ミティの上から目線の言葉に私は異議を唱えたかったが、自分を庇ってくれたことに変わりはないので今回ばかりは見逃すことにした。
「それで、今回お伺いしたいことなんですけど」
「話は聞いておる。『ドゥオールの迷子』についてじゃろう？」
「はい」
私はその場で正座に組み替えて、食い気味に頷いた。
カザーは私の変わりように驚いていたが、ふっ、と目を細めた。
「若い頃は狂ったように研究しておった……しかしのぉ」
カザーは椅子に座り、杖を頬杖の代わりにして小さく溜め息を吐いた。
「わしの知る限り、ドゥオールの迷子はおまえさん以外に一人しかおらん」
「その一人って……」
「街の外れで骨董屋を営んでおるー……名前はーなんじゃったかのぅ……」
「クララ……！」
震える声で名を呼んだのは、ミティだった。
カザーは言われてようやく思い出したらしく、「そう、それじゃ！」と機嫌が良さそうに言った。
「ミティ、クララのところ行ってくる！！」
「あ、ちょっ──」
私の制止する声も聞かず、そう言うなりミティは駆け出した。
さすがネコ(ぬいぐるみだが)とでもいうべきか、彼女の足の速さは韋駄天の如く、徐々に小さくなってゆく後ろ姿はあっという間に見えなくなる。
「……カザーさん」
ミティを引き留めることは諦め、私はカザーに向き直った。
──謎はまだ、残っている。
「もっと詳しく教えてください」
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜！ 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました（笑） 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (
レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください！ (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです！ この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸｀*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました！ 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います！ (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜！ 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葉月だんご | 作成日時：2019年10月19日 12時
