人形の街3 ページ3
「あなた、この街に越してきたのよね?」
ミティに訊かれ、
「いえ……急に眠気に襲われて、気が付いたら……」
「『ドゥオールの迷い子』なのね。名前は言える?」
「どぅ……?? ……Aです」
オレイユから聞き慣れないものが。
「『ドゥオールの迷い子』っていうのはね、外の世界から連れてこられた人形のことなの! つまり、おもちゃ箱の外から来た子!」
ミティが親切に教えてくれる。
ところで。
「ん? 人形? おもちゃ箱??」
待って待って待って。私の頭が追い付いていない。
人形? って言った?
思い返してみれば、『人形の街、シュピールツォイクカステン』とオレイユも言っていた。
つまりここは、人形の街? そんでもっておもちゃ箱の中??
(人形町……とかそういうことじゃない……よね)
頭を抱えた腕を壁代わりに、ちらりとオレイユ、ミティを見る。
先程感じた懐かしさは──
「ミミ、とハナ!?」
思い出した。
彼女らはここへ来る直前まで見ていたおもちゃ箱に入っていたぬいぐるみ。
ミミはオレイユで、ハナはミティのことである。
因みに名前は幼少期につけたものだ、ネーミングセンスは気にしないでもらいたい。ほんと、黒歴史だから。
「あーそれ、私達の主人が呼んでた名前ー! 懐かしー!」
ミティが勢いよく反応した。
「知ってるの!?」
私は肩にも違和を感じながら、ミティに飛び付いた。
主人とは、きっと──私のこと。
「う、うん……え、何でAが知ってるの?」
ミティは訝しげにこちらを見つめてくる。
そうだ。この街の住人しか知らないはずなのだ。
「私がその、主人なの」
「またまたぁ」
ミティは冗談として受け取ったようだ。
どうせ今の私は球体関節。人形になったのは安易に想像がつく。なら顔も変わっているのだろう。
最後に遊んだのも数年前だし、もともとの私の顔も覚えていないかも知れない。
「じゃあ、今日寝る場所がないのね?」
「え、あ、はい」
相変わらずオレイユは話の切り換えが早い。
何しろ急に話しかけられたので驚いた。
「じゃあうちに泊まっていってよ!」
と、目を輝かせるミティ。
これはもうお世話になるしかなさそうだ。
どうせ帰る方法もわからないしなぁ、と私は早々に諦めた。
「今日からよろしく! A!」
ミティが、嬉しそうに微笑んだ。
自分が買ったぬいぐるみだが、本当に可愛い。
昔の私、センス良いな。
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葉月だんご(プロフ) - 麦カケさん» 感想ありがとうございます〜! 私も書いてるとき、主人公の正体をバラそうか隠そうか迷いました(笑) 今後の展開にもぜひ、ご期待ください(*´ω`*) (2020年12月30日 23時) (レス) id: 1261bb0f48 (このIDを非表示/違反報告)
麦カケ(プロフ) - 初めまして。人形達が持ち主だって気づいてない所がせつないです(でもそう言う設定好きです)これからどう言う展開になっていくのか気になります。無理せず作者様のペースで頑張ってください! (2020年12月30日 17時) (レス) id: ea0439ca7f (このIDを非表示/違反報告)
葉月だんご(プロフ) - 千々さん» コメントありがとうございます♪ お気に召していただけたようで何よりです! この感想を糧に引き続き更新がんばりますので、お付き合いいただけたら幸いです〜(*´艸`*) (2020年3月30日 17時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - オリジナルでいい作品を久しぶりに見つけられました! 人形たちの微笑ましい生活をこれからも見ていきたいと思います! (2020年3月15日 13時) (レス) id: df88b28f21 (このIDを非表示/違反報告)
だんご(プロフ) - ぐうたら猫さん» コメントありがとうございます〜! 気に入っていただけたようで何よりです♪ ネコのぬいぐるみってカワイイですよね← (2020年1月8日 2時) (レス) id: 3d624ae683 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉月だんご | 作成日時:2019年10月19日 12時