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いつかの時まで ページ16

「あ、ありがとうございますAさん」

「………」



保健室から取ってきた布をトモミに渡したA。

彼女は満身創痍の状態だった。


行きで八左ヱ門とすれ違ってしまった故に、帰りは屋根の上を極力音を立てずに走ってきたのだ。

普通の14の少女が出来る芸当ではないが、唯や利吉に厳しく鍛えられたため可能となった。


それでも息は切れていた。

最初からユキかおシゲに頼めばよかったのに、この人は人が良すぎる。



「…あの、勘違いだったらすみません」

「…?」

「Aさんがこの学園に来たのって、私達のためですよね」



ユキの言葉に、Aは少しだけ反応を見せた。



「今忍術学園に“天女らしき人物が来た”って噂が出回っているんです。それは貴女も分かっていたでしょう」

「………」



無言を肯定と受け取ったユキは話を続ける。



「貴女のことですから、唯さんにも利吉さんにも止められていたのでしょう。

それでもこの学園に来たのは…私達のためじゃないのですか?」



ユキの言っていることは当たっていた。

Aが忍術学園へ来ることに、一応彼女の責任者である唯や利吉は抵抗していた。

唯は彼女に行くように言ったが、彼女が渋っていたら本気で行かせないつもりだった。

しかしAは、“誰かを助けられる”という理由でこの学園に来たのだ。



「………これ、まだ結んでない。上手く出来なくて」



しばらくの沈黙の後、Aは懐から包みを取り出した。

その中には、いつかの時にユキ達が贈った組紐が丁寧に包まれていた。


そしてもう一つ、Aはまた別の人からの借り物である狐の面を手に取る。



「………いつかこのお面が皆の前で取れるようになった時、貴女達に結んでほしい」

「「「………!!」」」



ユキ、トモミ、おシゲの三人はその言葉に目を見開く。

Aが重度の人見知りであることは承知していた。

そんな彼女がお面を取る。

それはつまり、この学園の皆と和解できた時を意味していた。


立ち向かう以外でも、方法などいくらでもあった。

逃げるなり、目を逸らすなり、誰かに任せるなり。



「………待てる?」

「もちろんです!」

「私達も協力します!」

「私達だって皆と仲直りしたいでしゅ!」



三人の勢いの良い返事を聞いたAは、笑う代わりに目を細め、三人の頭を撫でた。

いつのまにかトモミの出血も治まり、朝日が優しく四人の姿を照らした。

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HANON(プロフ) - くまのんさん» 光栄です。ありがとうございます。 (5月4日 21時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
くまのん - とっても面白かったです‼ (5月3日 21時) (レス) @page25 id: 333fed96b4 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - 不透明どろっぷ。さん» ありがとうございます。更新はめちゃくちゃ不定期なので、ふと思い出した時に見ていただけたら嬉しいです。 (2月8日 23時) (レス) id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)
不透明どろっぷ。(プロフ) - 3年ぶりくらいに見てみたら結構進んでた…!今見返してみたからこそわかるネタとかも結構あって面白かったです。続き楽しみにしてます。 (12月22日 23時) (レス) @page25 id: f6e73ed9d2 (このIDを非表示/違反報告)
HANON(プロフ) - あまねさん» 見つけてくれてありがとうございます (11月5日 12時) (レス) @page24 id: 42f4c6aba7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:HANON | 作成日時:2019年9月26日 23時

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