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月華さんリク『敦君か太宰さん関連で頗る機嫌の悪い芥川さんが怒鳴って手を上げてしまい、夢主ちゃんがそれ以降甘えなくなってしまったら』 ページ16

──待ってください、太宰さん。

無意味と知っていた。知っていて彼の人を捕らえようと伸ばした羅生門は、横から現れた虎の爪に引き裂かれた。

「何度も云うけど」上機嫌を装う為に常時吊り上げられた唇の端はそのままに、冷たく細められた双眸は僕を見ている。


「私はもう君の元に──マフィアに戻る心算はないよ。今の私は武装探偵社の社員で、私の部下は君じゃなくて此処に居る敦君だ」

『私の新しい部下は君なんかよりよっぽど優秀だよ』


僕の異能がもっと強力なものであれば、或いは太宰さんは今も僕と同じ場所に居たのだろうか。愚考と知っていて尚、その可能性に思いを馳せてしまう。



□□□



床に座り込んで遊んでいる童を見て、此処が自宅であると遅れて理解する。一瞬の白昼夢だった。鼓動が五月蝿い。短い呼吸を繰り返し、全身に汗をかいている事に気が付いて厭な気分になった。

「とらさん」と歌うように口遊みながら色鉛筆を思い思いに動かしていた子供は、僕が起きたと判ると顔を上げて抱擁をねだった。とてもその気にはなれず、顔を背けてそれを無視していると、子供は自力で僕の座る長椅子へとよじ登ってきた。


「ぱぱ、あのね」


子は弱さの象徴だ。僕に似たこの幼子もそれは例外ではない。そも僕自身が弱いのだから仕方のないことだ。その当り前の事実が何故か今は酷く腹立たしい。


「とらさんかいてた」


とらさん。虎さん。
異能を裂いたあの鋭い爪。太宰さんに認め讃えられながら生きているあの男。
独りでに蠢き始めた黒獣を視界の端に認めて、これは不味い、と思った。


「すごくね、」


早くこの場から、この弱く脆い生き物から離れなければならない。


「つよいよ」


駄目だ、と思った時には遅く、小さな体は片手で胸を押さえつければ簡単に倒れた。黒布は子供の頭のすぐ横を切り裂いていた。自身の頬に走った赤い線を追い掛けるように、子供の瞳が動く。


「黙れ、黙ってくれ、頼むから」


ぐ、と手に体重を込めると、きょとんと呆けていた子供の顔が初めて苦悶に歪んだ。
「うぅ」と厭うような幼い声の後、刃物が如く飛翔してきた殺気に肌を刺されて咄嗟に飛び退く。



「兄さん……」


白魚のような指に握られているのは細身の短刀だ。湯上りで寝巻き姿の銀が、体の一部のように馴染んだそれを素早く構え直した。


「いま、何、してたの?」


髪を伝う水滴が床に落ちる前に、怒りで細まった瞳孔が黒髪の隙間から至近距離で僕を見据えた。

2→←7(終)



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ロト - こめ(元団子)さん» こめさん、ありがとうございます!芥川兄妹と幼児ちゃんがベビーカステラもぐもぐしながら帰るのを想像したらほのぼので悶えました(笑) (2019年8月31日 17時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» またリクします!「任務を頑張る芥川さんの為に、銀ちゃんに手伝ってもらいながら、夢主ちゃんがご飯を作る」というお話をお願いします! (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
月華(プロフ) - こめ(元団子)さん» こめさん、リクありがとうです!知らない人から食べ物を貰うのは良くないって、本当に思いました。農薬入りのお菓子、怖すぎる・・!夢主ちゃんが食べなくて良かった〜! (2019年8月27日 12時) (レス) id: 59746b99e9 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ダークアリスさん» 了解です! リクありがとうございます〜 (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 月華さん» リクありがとうです! 書きましたけど人のじっとりとした悪意の話に…ww (2019年8月27日 12時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こめ | 作成日時:2019年6月23日 22時

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