これはうさぎですか？ ページ2
久しぶりの娑婆の空気である。国木田はキーボードを忙しなく叩いていた指を休め、事務椅子の背に軽くもたれかかった。
国木田はつい先日まで、《鼠》に嵌められ、殺人の容疑で留置所に閉じ込められていた。乱歩が提出した証拠によってそれが冤罪であると証明されたので、こうしてまた武装探偵社の一員として働いている訳だが。
冤罪が晴れたとて、目の前で少女を死なせてしまった事実は何も変わらない。それでも国木田は進まねばならぬ。虐げられる弱者も、理不尽に散ってゆく命も、この世間にはごまんと居るのだ。彼等を救う為、立ち止まっている暇はない。
そう云えば、銀行強盗の制圧で出払っていた鏡花の帰りが遅い。国木田がそう考えた刹那、扉が僅かに開く音がした。鏡花が一人、扉から顔のみを覗かせている。
「遅かったな。報告書は早めに──」
国木田が言い終わる前に鏡花は体を素早く部屋に滑り込ませ、護身用として持たせた筈のテーザー銃の銃口を躊躇いなく国木田へと向けた。
「何だ、奇襲の訓練か。それにしては気配の消し方が不十分だぞ」
「違う。訓練じゃない」
「……何？」
国木田の眉間に皺が刻まれた。
「貴方には少し眠って貰う必要がある」
鏡花は暗殺者だった過去を彷彿させるような暗い表情でそう言った。反射的に国木田の手が懐の手帳に伸びる。
ぎい、と。廊下の方から、板張りの床が軋む音がした。同じ音を聞いたらしい鏡花は焦りの滲む視線を其方に向けた。ほんの一瞬ではあったが、国木田からしてみればそれでは何かありますと言っているようなものだ。
足音からして、そこに居るのは大柄な人物でない。�爐修讚瓩呂修辰函∪茲龍晴屬里茲Δ棒鼎�に入室した。
「……ッ、駄目！」
扉まで駆け寄った鏡花が庇うようにそれを抱きしめ、国木田に背を向けた。帽巾のついた外套を着ているためその下の貌は全くわからないが、体格からしてそれは十、十一程度の子供であるようだった。
成程、と国木田は息を吐いた。孤児に食糧でも分けてやりたかったのだろう。それを俺に咎められる事を恐れ奇襲を掛けてきたと言う訳か。
気持ちは分かるが、この先もそんな調子ではキリがない。出来るだけやんわりと注意をしようとした国木田が口を開く前に、鏡花は澄んだ瞳で国木田を見上げた。
「この子は兎。私は兎を拾った。だから責任を持って面倒を見る」
深呼吸。国木田は叫んだ。
「人間は犬猫とは違うんだぞ小娘！」
「犬猫じゃなくて兎！」
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです！最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです！癒されました〜！ (2019年8月25日 23時) (
レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん！ お久しぶりですね！ そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー！ありがとうございます これからもお付き合いください！ (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが！きになりすぎます！！応援していますー！頑張ってください！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年6月22日 21時
