尋問じゃないよ ページ9
普段は会議室として使用している部屋だ。国木田は子供をパイプ椅子に腰掛けさせ、彼は自分の体格が常人より大きく、女子供には威圧感を与えやすい事も知っていたので、できる限り穏やかに子供に話しかけた。
「A、と云ったな。お前の家を探す為、とても重要な手掛かりになるかもしれない事だ。俺が今からする質問には嘘偽りなく答えてくれ。わかる範囲、覚えている限りで構わん」
□□□
言葉を変え苦心しながら子供と応答を繰り返した国木田だが、望むような情報はついぞ得られなかった。自分の齢、生年月日はわからない。住所など以ての外。とにかくこの街に気がついたら立っていた……というような内容の返答が言葉足少なに返ってくるのみだ。
片手で自らの髪を掻き上げ、国木田は少し唸った。それから、胸元から一枚の写真を取り出した。それを子供の前に置き、指で指し示してみせる。
「�爐海涼豊瓩妨�覚えはあるか？」
『ある』と答えられても困るが、念の為だ。
中島敦の入社直後、国木田は同じ写真を彼に見せた。極めて残忍な異能者──芥川龍之介が、そこに写っていた。
「ない」
子供は写真から顔を上げてそう答えた。国木田は押し黙って子供の挙動を観察する。人は嘘をつく時、何かしら仕草に出るものだ。人によって千差万別ではあるが、国木田は目の前の子供からそれを探ろうとした。
瞬きをしなければ本当に人形と見間違えてしまうほどに、子供の表情は変わらない。此れは何もない者の顔だ、と国木田は反射的に思った。
何も──その身を構成する記憶が、この子供からは一切失われている。経歴、氏、年齢、それらを問う質問に対する答えが全て「わからない」だった事がその証拠だった。
よって、手掛かりは名前のみ。それすら本名であるかは怪しいのだ。
□□□
国木田が扉を開けて直ぐ、鏡花が子供を出迎えた。何故かは判らないが、鏡花はやたらと子供の世話を焼きたがる。
貧民街を彷徨い歩いていた頃の己と、帰る場所のない子供を重ねているのかもしれない。感情移入するのは勝手だ。ただそれで普段の業務に支障が出るのなら止めろと忠告しようとした。
「迷い猫探しの依頼。この程度の任務ならAも連れて行っていい？」
「あまり外に出歩かれては保護した意味が……まあ善い。面倒事は起こすなよ」
承知したとばかり頷き、いそいそと子供の外套を準備する鏡花と、何処か嬉しそうな子供を見て、国木田は口を噤んだ。
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ロト - こめ(元団子)さん» お久しぶりです！最近わりと多忙でした…少し時間が空いてきたので見てみようと思えば結構更新されてて嬉しかったです！癒されました〜！ (2019年8月25日 23時) (
レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ロトさん» ロトさん！ お久しぶりですね！ そうです娘主は奔放な子供なので自由に遊び回っては国木田さんに叱られ 最終的には追いかけ回されますw (2019年8月25日 22時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ロト - 近所迷惑(社員寮)……つまり、国木田さんの胃痛が増すんですね分かります。 (2019年8月25日 1時) (レス) id: 84710b8cd8 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 来霧さん» やったー！ありがとうございます これからもお付き合いください！ (2019年8月19日 2時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
来霧(プロフ) - 続きが！きになりすぎます！！応援していますー！頑張ってください！ (2019年8月17日 0時) (レス) id: cc1c1fbc8a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年6月22日 21時
