ヤンデレ龍くん！ ページ16
「喰らいたいと云う気持ちが高じ、何時しか喰われたいと切望するようになった。彼奴は世渡りは上手いが、実のところ他人に興味も関心も抱いておらぬ。そして唯一人、僕のみが彼奴の中に存在している。その事実は僕を満たすのに十分に足る。心地好い。もっと求められたい。彼奴が僕に春情を抱き、縋る様になる理由、切欠、土台がほしい」
ブゥーーンと低く唸る空調は常に稼働している。美少女は激しい呼吸を繰り返し、錆がこびり付き沈着した壁を引っ掻いた。逃げようと思考するあまり正常な判断力が失われているのだ。嘲るように跫はゆっくりと近づいてくる。澱を纏う闇そのもののような男は、少女の側にしゃがみ、立てた膝を皿にして頬杖をついた。恋愛相談だ。幽鬼のように無表情な男の唇がそう動いた。
「僕は他人に肌を見せる事を厭う。異能の要となる衣服を取り払い、自分が丸腰の状態となる事が許せぬからだ。その僕が何の警戒も気構えもなく肌を晒す意味など、彼奴は知らぬのだろうな」
獣を象った異能は、少女の周囲をじゃれるように浮遊する。獣が纏う細い電光が少女の耳朶を焦がし、煙草を肌に押し付けた時のような音が出た。少女の脳は恐怖で萎縮を始めていた。
「ところで、僕の好いた人が他人と寝てしまったんだ。理由を問えば、ある者の気持ちを知る為だと云う。彼奴の興味関心が他者に渡ってしまうのは嫌だ。あれは僕のものだ。──その、�爐△觴圻瓩�誰だか知ってるか？」
漸く発言権が与えられた。少女は一切の水分を失い、パサパサに乾いた口をどうにか動かす。「し、しら、しらない……」
「わたしじゃない、わたしじゃない！」
「いいや、貴様だ」芥川は哀れな否定の言葉を無慈悲に一掃した。底冷えする視線で立ち上がる。外套に根を繋がれた獣が自身の仕事を悟り、身を一度大きく震わせた。
「己より優遇されているように見える他者を狡いと妬むのも僻むのも結構。然しそれは僕に及ばぬ範囲での話だ。貴様は僕のものを取ろうとした。略奪者は消す。仲間のため、妹のため、幼い頃からそうしてきた」
「今は、僕の為だけに貴様を殺す」
少女は、大きく開いた獣の口が、トンネルのようになって自分に迫ってくる幻覚を見た。発光しているのではないかと見惑うほどの赤が視界いっぱいに広がり、アッと声を上げる暇もなく少女は消えた。
床に散ったわずかな血痕を眺め、芥川は出口へと向かった。
翻る外套は八咫烏の羽の如く、何時だって死を連れて来るのだ。
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こめ(元団子)(プロフ) - ドロシーさん» 嬉しいです！ ありがとうございます！ (2019年10月16日 0時) (
レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
ドロシー(プロフ) - 好きです。(真顔)普通に自分の好きな小説のタイプにドストライクすぎて怖いくらい好きです。もうもっとヤってもらって大丈夫っす(鼻血)これからも応援してます！更新頑張ってください！ (2019年8月9日 0時) (レス) id: 1a3258aeeb (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - 鯖野郎さん» ありがとうございます どんどんヤります (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
こめ(元団子)(プロフ) - ろもざんさん» 文面にセンスがありすぎて笑ってしまいました。更新はややゆっくりですがこの先もよろしくお願いします！ (2019年5月25日 23時) (レス) id: a3e8a2be57 (このIDを非表示/違反報告)
鯖野郎 - いいぞ もっとヤれ(真顔) (2019年5月8日 21時) (レス) id: df533e69bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こめ | 作成日時：2019年1月14日 14時
