14話 ページ14
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そして渋い表情で見つめているAを尻目に、尾形は二階堂へと語りかけはじめた。
「この三十年式歩兵銃……優秀な銃だが、並の兵士では100メートル先となると相手に致命傷を与えるのは難しい……。でも俺は300メートル以内なら確実に頭を打ち抜ける」
尾形が自信たっぷりに言っていることは間違いでなかった。
彼は第七師団の中でずば抜けて狙撃の才能があり、鶴見中尉にまで一目置かれていたのだ。そんな尾形に対し、この状況で小銃を持たない谷垣が何もなく逃げ切ることは難しいだろうとAは考えていた。
「第七師団は堡塁からマキシム機関銃を撃ってくるロシア兵に手こずった。俺やAのような精密射撃を得意とする部隊を作っておけば……あんなに死なずに済んだはずだ」
尾形は当時を思い出すように言葉を吐く。
すると双眼鏡を覗く二階堂が、相手に動きがあったことを知らせる。
「向かって一番右の窓に動きが……鉤爪のようなものが出て来ました。窓を塞いでいます」
「だろうな……」
そして程なくした時、塞いでいた窓の隙間から双眼鏡が覗くのが見えた。
間髪入れずそれを打ち抜く尾形。
「当たりましたが……」
「双眼鏡の動きがうそ臭い」
「真ん中の窓……窓から何か捨ててます」
いくつも投げられたゴザに巻かれている物がもくもくと煙をのぼらせていた。
「煙幕を作って飛び出す気です!!」
「……。先手を取られた」と尾形は走り、二階堂とAも後に続く。
そして家の左側へ回り込んだ位置から見下ろせば──、
「やられたな……」
既に谷垣は逃げた後だった。
「……だが、手負では遠くまで逃げられん。──谷垣狩りだぜ」
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ra(プロフ) - プスメラウィッチさん» しがない字書きにコメントありがとうございます🙇とても元気をもらえました。実はこのサイトで文章トレスされてしまっていたようで、もうここには投稿しない方針で考えています。pixi⚫︎の方などに投稿するか検討しているのでその際はお知らせいたします (1月31日 22時) (レス) id: e3ec8bd41f (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ(プロフ) - 続きの更新頑張って下さいね😆応援しています。 (1月31日 15時) (レス) @page26 id: b10205217f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ra | 作成日時:2021年5月13日 1時