焼き芋 ページ8
『棘について?』
校庭の木にぶつかる形で180度ひっくり返った状態の野薔薇に、私は首をかしげる。
野薔薇「そうなんです。真希さんとAさんが尊敬できることは分かったし、パンダ先輩が実力ある呪術師だってこともわかった。」
なるほど。私の事を尊敬してくれる後輩ができたって訳か。
パンダ「俺のことも真希やAみたいに呼んでいいんだけどなぁ。」
身体を起こし、ジャージについた木の葉をはらいながら野薔薇は答える。
野薔薇「尊敬はしてるわよ。でもパンダさんって呼ぶとメルヘン臭いじゃない。」
『確かに。』
パンダ「まぁ、ぶっ飛ばされながらも雑談出来るようになったのは褒めてやるけど。」
野薔薇「あんだけぶっ飛ばされりゃ、受け身ぐらい覚えるわよ。」
パンダ「ほーん、で。」
パンダは一旦そこで言葉を切り、棘が帰って来ていないか辺りを見回した。
パンダ「棘がどうしたって?」
野薔薇「どういう先輩なのかなって話よ。」
パンダ「え、話してて分からない??」
野薔薇「分かんないっつーの。いや、悪い人じゃないのはわかるんだけど、語彙がおにぎりの具じゃ、限度があるでしょ。」
パンダ「俺らはもう慣れすぎたからなぁ。なあA」
『確かに、言われてみれば当然の疑問かも。』
私は棒状の呪具を伏黒に向けて、攻撃をかわし、頭にこつん、と一本お見舞いする。
伏黒「いって……」
呻く伏黒を尻目に私は言葉を続けた。
『私達の中じゃ一番面倒見がいいんじゃない?』
パンダ「ああ見えて、根は明るいよな、憂太を除けばタメじゃ1番の善人だろ。」
真希「少し悪ノリするのが玉にキズだけどな。」
と靴紐を結んでた真希が会話に参戦する。
パンダ「あいつそんな悪ノリする?」
真希「一緒になって悪ノリするほうだからわかんねーんだよオマエは」
パンダ「心外だなー、俺らのは悪ノリじゃないよ。ノリがいいんだよ。」
ほんの少し、パンダの注意が真希との会話に向いたとみるや、野薔薇は左右のフェイントを織り交ぜて、アッパーを試みる
パンダ「ま、とにかくーー」
野薔薇「げっ」
パンダは難なくスウェーでそれをかわすと、ソバッドじみた動きで野薔薇の足をはらう。
軸足を崩された野薔薇はぐるぐると回転しながら倒れた。
受け身はちゃんととってるみたい。
パンダ「いい奴だよ、棘は。そのうちオマエにもわかるだろ。」
野薔薇「………あ、そう」
野薔薇にも棘の優しさがいつか分かるだろう。
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作者名:あかさたな | 作成日時:2022年9月14日 7時