【ダメプリ】攻防戦 (ページ10)

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腕を掴むな！ページ10

手紙を読んだ後、私はクロムの元へ向かった。
急に私が飛んでやってきたので、頬杖をついて書類を真剣に読んでいたクロムは、驚いたあまりその書類を落としてしまった。

クロム「そんなに息を切らしてどうしました？」

口調は穏やかだ。落とした書類を拾い集め、ながい銀髪を耳にかけた。

『…私とクロムが、婚約する噂がイナコまで広まってるの…！』

「おや、もうそこまで広まりましたか。嬉しいような、恥ずかしいような…」

『クロムの仕業？』

そう聞くと、勝ち誇るようににこりと笑った。これは確信犯だろうな。

「私の仕業でないとしても、もう私と婚約するしかないんじゃないですか？」

クロムが私の左手に触れた。

『嫌ですってば』

その手を荒々しく振り払う。悲しそうな顔をされたが気にしない。

『とにかく、流した噂は流した人が消すものです。取り消しておいてください』

「そうですね、これで訴えられては困りますし、従っておきましょうか」

分かってくれたならいいでしょう。
それじゃあさっさとこの危険な部屋から逃げるとするか。

『では、さようなら～』

「…待ってください」

ひぃっ！またこの前みたいなことやられるの！！？

聞こえなかったってことにして…逃げ……

ああああああああああああ腕を掴まれてしまったぁぁぁ逃げられないよぉぉぉぉ

「…メア皇子の部屋に行かれたようですね」

『ひっ……は、はい…行きました…』

力強すぎぃぃぃ

「婚約相手は…メア皇子に決められたのですか？」

『ち、違います違います！』

早く！早く逃げなきゃ！！

『違うから、離し……』

ふと、俯いているクロムの顔に目をやると、クロムが泣きそうな、真っ赤な顔をしていることに気付いた。

『な…な、な……』

何…？どうゆう表情なのこれ…。

「本当に、違いますか」

『…えっと、クロム……？』

思わずその顔について聞いてしまいそうになった。

「質問に答えてください」

『……ほ、本当に…違います……』

腕を掴む力が強くなる。
このまま帰れないのかな…。ちょっと涙目だし、離してとか言えないなぁ。

「…そうですか」

そう言うと、徐々に掴んでいた力が消えてきた。
笑顔を見せてくれるが、目を合わせてはくれない。

「何してるんですか、…どうぞ、帰って」

『あっ、はい…』

言われた通りに従って帰ることにしよう。

部屋から出る時、ちらとクロムの様子を伺った。クロムはいつもの定位置に戻って、こちらに背を向けていた。