期待するな！ ページ9
「それは…ただ単に、お前が気になって…」
き、気になって？
『え？気になる…とは？』
「おい、妙な期待はするな。俺にとって、若い人間は珍しいからってだけだ」
あぁ、そういうことね。気になるって聞くと恋愛系の言葉に聞こえてきちゃう。
「今の若い奴らのファッションを教えて欲しいんだ」
『ファッション…ですか？』
見た目的に、全然ファッションとか興味無さそうだけど…？
「俺じゃない。キュアランのためだ。」
『キュアランの服ですか？まさか…ここにある大量の小さなドレスって、全部手作りなんですか！？』
私の大声に、皇子は、表情で「うるさい！」と伝えてきている気がした。
「そうだけど…」
私は感嘆の声をあげそうになったが、口を閉じた。
メア皇子が作ったキュアランの服はとても美しかった。綺麗な襞や刺繍は、母でも作れないくらいに丁寧だ。皇子はいつも部屋に篭もって作り続けていたのかな。ちょっと尊敬するかも…。
「早く教えろ…」
いや、嘘嘘。こんなに見た目の悪い人は初めて見たよ。
う〜ん、やっぱりメア皇子を振り向かせるのは難しいか。諦めよう…。
じゃあ、適当に流行のものでも教えて部屋に戻ろう。
『最近は…リボンは前よりも小さめの方が人気です。あと、レース等も少ない方が多い気がします』
「ふぅん……」
気力の無い返事をするとすぐに、紙と鉛筆を取り出して何かをかき始めた。ちらりと覗くと、可愛らしいドレスの絵が5種類程かいてあった。
『今、一瞬で描いたんですか…？』
「ああ。…どれが良いか、教えろ」
『え？ううん……』
赤いチェックドレスを選んだ。
「ふふ、やっぱりな。この柄が流行ってるのは知ってた」
髪の毛の間から、皇子が薄く微笑むのが見えた。口元は少しリュゼ皇子に似ているかも。
「…うん、出来た。もう帰っていい」
『えっ』
「何だよ」
『あぁ、いや…じ、じゃあ、さようなら〜』
皇子の部屋を出て、冷静に今あったことを思い出してみた。
……今の部屋訪問、何だったんだろう。
自分の部屋に戻ると、まだテオがいた。
「姫様、何か進展は？」
『何も無かった…』
テオがキョトンとした顔をする。
いや、説明とか求められても私だって分かんないからしてこないでね？？
「ま、まあいいや。それよりな、王妃様から言伝だ」
ママから？何だろう…
[風の噂で聞きました。クロムさんと上手くやっているそうですね。子供が楽しみです]
…は？
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
