目覚めを待つな！ ページ31
『ん…？』
気付けば私は眠っていたらしい。
｢……ああ、起きましたね｣
私の前で、椅子に座って本を読んでいたクロムが私のほうを上目遣いがちに見上げた。
｢貴女…体の中に土があったみたいで……何があったんですか？……ああ、いや、それは後で聞きます。とりあえず、元気になって良かったですね。きっとなぜかあの時一緒に居たメア王子もお喜びになられていることでしょう｣
『は。はぁ…そうですか…』
窓のカーテンが、外の風に揺れている。そこから差し込む光は橙色だった。
ええと…私があの通路に入ったのが夕方で、その後何時間か迷って、メア王子の部屋から見た景色はたしか早朝だったっけ。
……と、いうことは、私…少なくとも9時間は寝てたの！？うわあ、本当に体調を崩してたんだ…。…まあそりゃそうか。寒い通路の中で一夜を過ごしたんだもの。誰でもこんなことしたら風邪ぐらいひくよね。
……あっ！
そんなことより、メア王子ともう少し話し合わなきゃいけないんだった！クロムと２人きりなんて、いつ誘導尋問されるか分かったもんじゃない！
『…ねえ、クロム。部屋に戻っても良いかな』
「いけません。2、3日ここで寝ていてもらいますよ」
げっ、そんなに長く！？
『私もう元気だよ？それに、1人でここにいるのは寂しいよ』
「心外だ。私がいるのに」
『クロムだって仕事があったらどこかへ行っちゃうじゃない』
「そんなことありませんよ。ほら、今日はずっとここに座って読書をしていましたし」
そう言って、クロムは自分が座っている椅子の足元を指さした。たしかに、かなりの量のおおきな本が積んである。
…どうしてずっとここにいたんだろう。
『…すぐに尋問をするために待ってたの？』
「………まさかとは思いますが、私がここで貴女の目覚めを待っていた理由のことを言っていますか？おかしいな。そんな訳ないでしょう」
クロムが、読んでいた本を閉じた。本を閉じる音が、ボンっと大きく鳴った。
あれ？クロム、もしかして怒ってるのかな？なんで？
……いや、とにかく、話題をそらそう…。
『…っえっと、そういえば、最近急に襲ってきたりしなくなったよね！なんで？』
「…はぁ。話題を逸らしたつもりなんでしょうけど、全く逸らせていませんからね」
『え？』
「なんでもありません。…貴女のその言い方だと、どうやら私に襲われたいようですね？」
『えっ！？』
「おや。否定されないのですね」
『い、いや、ちが、』
「もう遅いです」
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
