恐れるな！ ページ14
５分前のこと。
私はもう吹っ切れて、一人でメアへのお土産を探していた。もちろん好感度アップのため。
昨日メアから貰った地図によるとここらへんにキュアラングッズが沢山売っているはずなんだけど…全然見当たらないなぁ……。
「お嬢さん、どうした？」
強面の男の人が声を掛けてくれた。ガガさんというらしい。
欲しい物を伝えると、俺もちょうどそこに行く予定だから着いて来いとだけ言われ、私は着いて行くことにした。風貌は怖いけどいい人そうだ。
連れて行かれたのは、薄暗い地下の診療所だった。そこの階段は埃まみれで歩くのが辛い程だった。
灰色がかってしまった私のカーディガンはガガさんに、横向きに吊るされている麻縄にかけて貰った。
これはおかしいぞ、と思った私が何か問うのをガガさんは阻止するように、私の目をじっと見つめた。
｢随分綺麗な格好だけど、君はここに何をしに来たの？そもそも、君は誰なの？｣
今更とも言える質問だ。ガガさんが笑顔で言うので、
『私は隣国の姫です。条約を結んだ暁…友好を示す為に、第2王子に何かプレゼントを買いたいんです』
私もにっこり笑顔で素直に答えた。答えると、ガガさんの血色の良い顔は青くなり、絶えず上げられていた口角はへの字になってしまった。これは困っている顔だ。そりゃあそうだ。少し金持ちなお嬢さんと歩いているだけだと思っていたら、一国の姫を横に連れていたのだ。イナコは小さいけれど、一応ひとつの国を維持して行く力は持っている。他国には負けても、小規模な集落や族に負ける程弱い訳では無い。
『あの、気にしないでください。国交を交わした以上、相手国の方々との交流も必要ですし…』
｢いえ…いいえ……違うのです。イナコに恐れているのではございません…｣
ガガさんは、｢自慢だ｣と言っていた太い腕をブンブンと振り回しながら首を横に振った。
｢宰相様です。宰相様が恐ろしいのです｣
クロムの名前が出てくるとは思わなかった私がつい｢はぁ？｣と声に出したせいで、ガガさんの顔色はいっそう血の気が引いた。私は慌てて口角を上げた。
｢姫様……ええと、A姫様…は、宰相様と御婚約されたのでしょう？｣
まだ噂は広まったままだったらしい。
『違います！あれはただの噂です』
｢そんなことありません。だって、宰相様直々に仰っておられましたよ？｣
えぇ？く、クロムが？？
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作者名：べっこう飴 | 作成日時：2019年1月26日 0時
