家事をするな! ページ13
地下に入り、更に、更に下へと階段を降りる。螺旋階段は隅に埃を躍らせていた。灯りも少なく、目を凝らして足元の段差を探すのが精一杯だった。皇子を抱きかかえながら降りるには最も不向きだ、とクロムは頭の中で愚痴を言った。
「本当にこちらにベッドがあるのでしょうか」
男は答えなかった。ただ、1人の男がもう2人に何か申し訳なさそうに目配せをした。
1番下まで降りるとある部屋に入らされた。本当に寝床はあった。驚いたのが、この部屋は、今までの湿っぽい雰囲気と打って変わって、なかなかにファンシーな見た目をしていることだ。薄桃色の天井から吊るされたシャンデリアが眩しい位に輝き、クロムは目がチカチカした。これから皇子が寝かされるであろうベッドの上には天蓋カーテンが広がっていた。
坊主頭の、しわの多い男が「どうぞ」と言うので、クロムはリュゼをそのベッドに横たわらせた。他の男がクロムと自分達用に、フワフワな椅子と、可愛らしい小さなお菓子、桜の花びらの様なものが浮かんでいる紅茶を4つずつ運び、ガラスで出来た円い机の上に満足げに並べた。
「あまり城下に行かないものですから、こんな穴場な下宿先があるとは知りませんでした」
クロムは、探るように3人に聞いた。また返事は来ないと思っていたが、1人が喋り始めた。名をザギと言った。
「いえ…ここは、下宿先ではありません」
「なら、ここは…」
「ここは、俺達の秘密基地です」
秘密基地?なかなかに子供じみているな。
「俺達にはこんな風貌ながらも、家内もおりました。ですが、俺達はその家内よりも乙女思想が激しいのです。
服飾や家事に凝りすぎてしまったりで女房に捨てられた輩達が集まって…気付いたらこれ程に…」
変わった集団である。怒られる程家事をやるとはどうう事だ。そんな家事あるものか。
いや、ここで質問をしたとしても答えは分からないだろうし面倒臭い。聞かないでおこう。
「このベッドや家具も全部作ったものなんですよ!」
「へぇ…。……ん?」
ふいに、クロムの視界に何かが映った。
あれは…Aが身につけていたカーディガンじゃないか?
「…すいません、あのカーディガンって……」
「え?……ううん、誰かこんな物持っている奴いたか……?」
ああ、間違いない。あれは彼女の物だ!だとしたら…この地下の中にいるのか?
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作者名:べっこう飴 | 作成日時:2019年1月26日 0時